テキストサイズ

この夏、君に溺れた

第6章 夢の終わり

「先生?」

見上げた先生は、逆に俯いていた。

「あの、封筒……」

「すまん。」

先生は謝っているのに、封筒を離そうとしない。

「これじゃあ、受け取れないよ、先生。」

「ああ、すまん。」

スッと封筒を離した先生。


「本当にすまん。藤沢。」

「えっ?」

「……お前の気持ちを受け止められない、情けない男ですまん。」

心なしか先生の声が、震えているように聞こえた。

「ううん。」

私は弱々しく首を横に振った。


すると先生は、私の肩に自分の頭を乗せた。

「なあ、藤沢。」

「はい。」

「もし俺の事を許してくれるなら………」

私の耳元で、ボソッと呟くと、先生はそのまま行ってしまった。









私は空を見上げた。

夏が、終わった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ