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この夏、君に溺れた

第6章 夢の終わり

駅まですぐそこだと言うのに、やたら長く感じた。

ふと気付けは、先生と再開した本屋さんが目に飛び込んできた。

「先生、ここでいい。」

先生は無言で立ち止まると、私の荷物を渡してくれた。

「そうだ。これも一緒に渡しておく。」

そう言って先生は、一枚の封筒を私に差し出した。

「バイト代。」

「えっ?」

何だろうと思って受け取って、中身を見たら一万札が三枚も入っていた。

「受け取れません。」

一度は先生に返した。

「じゃあ、親にバイト代は?って聞かれたらなんて答える?」

「後で振り込まれるって、答える。」

「いくら?見せてみろって言われたら?」

「それは……」

言葉が返せないのが、悔しい。


「悪いことは言わないから、受け取っておけ。」

そして先生は、私に封筒を握らせた。

その封筒をくしゃっと強く握り、バッグの中に入れようとした。

でも先生の、封筒を私に握らせた先生の手が、私を離してくれない。

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