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この夏、君に溺れた

第7章 もしも許してくれるのなら

一年前は、本だったけれど。

「さっきの本屋で再会した事、覚えてる?」

「うん。はっきり覚えてる。」

だって思い出したから、この本屋に入ったんだもの。


「あの時、俺さ。小説家になろうって決めて、バイトスパッと辞めてまで、物書きに打ち込んだのに、全然いい話書けなくてさ。」

「うん……」

「俺、どうなっちまうんだろうって、思いながらこの本屋に入ったんだ。」

あの日の事を語り始める先生は、あの日のボサボサ頭の先生とタブって見える。

「正直、芽衣と会った時。恥ずかしかったよ。落ちぶれた自分を、見られている気がしてさ。」

「そんな、落ちぶれたなんて。スーツか私服かの違いでしょう?」

ふっと笑った先生は、一緒に暮らした先生と、変わってなかった。


「だから芽衣に言い寄られた時は、どうにかなってしまったと思ったんだ。ああ、そうだ。これは、小説の題材だ。この子を利用して、教師と生徒の疑似恋愛するだけだって。」

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