双龍の嫁
第3章 茶話会
「そうよ。 ねえ、潤香お姉さま。 今日はここで夜までゆっくり過ごしましょう? 沙耶お姉さまも! 帰ってもどうせろくな食事もないし、こうやって楽しいお喋りもできないし。 あーあ、やっぱりわたくし、龍と結婚なんてしなきゃよかったわ」
璃胡が頬杖をつき、なげやりなため息を吐きました。
ところで、先ほどからわたしたちは彼女から『お姉さま』などと呼ばれていますが、わたしも含めた三人はたしか全員同い年です。
璃胡…彼女の、まだまだ娘らしい容貌や性格がそうさせているのかもしれません。
「シッ。 めったなことを言っては駄目よお。 用心深い長老の耳にでも入ったら……」
「龍の花嫁が嫌ということ? 瑠胡さんは幸せではないの?」
「お姉さまがたはどうなの?」
そう問われて、土の嫁はおっとりとした様子でうーんと首を傾げました。
「幸せなのじゃないかしら? お肉やお魚は食べれないけど、夫は毎日お芋を持ってきてくれるし……あ、でも、こんな美味しいお菓子も時々いただけたら、もっと幸せかもしれないわねえ……」
そんな潤香に複雑そうな表情を返し、璃胡は丸い瞳をくるっとわたしの方に向けました。
「夫たちは優しくて大事にしてくれる……幸せだと、思ってるわ。 わたしの所は元々、祖父母しか居ない寂しい実家だったから。 火龍は貴女に良くしてくれないの?」
「良く、ですって…? イヤよ。 あんな粗暴な、獣みたいな者とずっと一緒にいるだなんて……それに、最近はただでさえ暑くって仕様がないのに、あの人の傍ときたら、過ごしづらくって我慢がならないわ!」
吐き捨てるように言いながら自らの言葉にうんうん頷きつつ、火の嫁は腕を組んで先を続けます。
気性は少しばかり激しいけれど、正直そうな彼女にわたしは好感を持ちました。
わたしと違って思いをすぐに表情や口に出す、その率直さをうらやましく感じたのかもしれません。