双龍の嫁
第3章 茶話会
「大体わたくしの理想の男性って、もっと涼やかで俗世を離れたような、優雅な感じの方よ」
「……たしか璃胡さんのご実家って、男性ばかりの兄弟が七人、でしたっけねえ?」
もぐもぐと菓子を咀嚼しつつ、手と口を休ませることの無い潤香がそれに応えました。
「そうよ! やっとあのむさ苦しい家から抜け出せると思っていたのに」
「まあ」
そんな二人のやり取りをわたしはぼんやりと眺めていました。
他の龍に嫁いだ花嫁たちと定期的に会うことも、大事な行事のひとつです。
この地で四つの龍という均衛を保つことを信条とするならば、その花嫁にも和合を求められるのは自然なことなのかもしれません。
村に居たときはあまり接点がありませんでしたが、ある意味、遠い親戚の従姉妹同士のような、そんな連帯感がわたしたちのささやかな宴を和やかに包んでいました。
ともすればもう少し込み入ったことを話してもいいのではないか。
そんな風にもわたしは感じました。
「あの……璃胡さん。 貴女もしかして、まだ火の龍とは契りを結んでないのでは?」
「まあ……」
わたしたち二人の視線を集めた璃胡の頬に赤みが差し、ぐっと口ごもるさまをみてそれが図星だと分かったものの、やはり火龍の所は困ったことになっていたようです。
龍との交わりを経て彼らのしるしを体に受け取れば、近くに居て不快などという言葉が出てくるはずはありません。