先生、俺が教えてあげる。キスも全部
第1章 突然の質問
「先生、好きな人いる?」
授業が終わる音が教室中に響く中、ある生徒が教壇にいる俺の目の前に来ていきなりの意味わからない質問に目を丸くして固まる俺…国語担当の佐藤和海(さとういずみ)は絶賛混乱中である。
「…それを知って何になるんだ?佐伯和優(さえきかずや)。」
佐伯は俺の生徒で成績優秀だ。
栗色の髪の毛と可愛らしい目なのに少しキリッとしている目と整った薄い唇…ワンコみたいで人懐っこそうな雰囲気を醸し出す。
但し、授業中のこいつの態度といったら…最悪で…
殆ど寝ている事が多いし、下手したら窓の外を眺めていて
授業を真剣に聞いている様子が全くない。
それなのに成績を落としたことのないこいつはある意味天才なのかもしれないが…。
そんな奴がどうして俺にそんな質問をしてきたんだ?
疑問に思いながら苦笑いして佐伯の答えを待っていると、さも当然かのように…
「先生の事が気になるから。」
笑みも全く無い、ただじっと見つめてくる瞳に軽く目線を逸らして小さく息を吐く。
「…そうか…、気になってくれるのは嬉しいが授業の質問をしてくれると俺はもっと嬉しいんだけど…」
「ない。」
即答かよっ…!
ヒクッと引き攣る口元を何とか抑えながら笑みを作り言う。
「…ならもういいよな?来週テストだからしっかり勉強してくるように。」
トントンと教壇の机に置いてある教科書を揃えて佐伯に背を向け教室の扉を開けようとした時、引き止めるように声を掛けられた。
「…あのさ、まだ質問答えてもらってないんだけど?」
「っ!…佐伯、それは言う必要ないと思うんだが?」
「こっちはある。何?まさか、恋愛した事ないとか?」
平然と言ってくる佐伯の言葉にピキっと青筋が入り何とか振り返る。
生徒達が騒いでいて助かった…。こんなこと騒ぎになったら…たまったもんじゃない。
俺は深呼吸して佐伯に視線を向けて告げる。
「恋愛くらいした事ある。じゃあ次の授業頑張れよ。」