
先生、俺が教えてあげる。キスも全部
第3章 最悪な補習時間
遠慮なく……?
ヒクッと口元が引き攣る。
「…いや、別に遠慮なく来なくていい…」
「却下。言っただろ?俺、遊びじゃないって。だからそれを分からせてやる。あ、だからって先生はそんなに身構えなくていいよ。」
「は…?」
「先生って動揺したりすると態度と表情に出やすいから身構えずいつも通りにしててってこと。それにバレたくないでしょ?生徒に口説かれてるって。しかもキスされました〜なんて。」
佐伯は口元を上げ意地悪そうに言葉を言い放つ。
コイツっ…半分脅してんじゃねぇか…!!
「っ…絶対…好きになんかならねー…」
「へぇ〜、まあ精々頑張りなよ。」
「…お前の思い通りにはいかないからな…」
「はいはい。じゃあ補習は終わったし帰るね。」
佐伯は机に置いてある教科書や筆箱を鞄に入れて手に持つと俺に背を向けて歩き出す。
そして扉を開けてクルッと振り返り佐伯はニコッと笑って言う。
「じゃあね、先生。ごちそうさま。」
意味深な言葉を残し去っていく佐伯に唇が小さく震える。
ごちそうさま…、、ってアイツっっ…!
忘れてた…さっきまで佐伯にキスされて…
思い出してボッと顔が熱くなる。
何で突き飛ばさなかったんだよ…俺はっ…!
こんなんじゃ…佐伯の思うツボじゃないか…。
くしゃりと髪を片手で掴み、奥歯を噛み締める。
あんなのは本気じゃない、遊びだ。
興味本位と好奇心でやってきただけ。
こんなのが恋?
ふざけんなっ…!
絶対堕ちない。佐伯を好きにだなんてならない。
教師として、俺のプライドとして。
そう固く心に言い聞かせ俺は国語の教科書を手に教室を後にした。
