先生、俺が教えてあげる。キスも全部
第4章 感触
翌日__ 。
昨日の事が頭から中々離れず…眠れずに朝を迎えた。
唇にはまだ佐伯の唇の感触が残っていて…
あのキスの光景が何故か頭から離れずにいた。
それを振り払うかのように廊下を歩きながら生徒に朝の挨拶をして窓を開けていく。
二年の教室を覗けばまだ十人くらいしか来ていない。
その中にはまだ佐伯は来ていなくて内心ホッとする。
普通に接すればいい。大丈夫。
変な行動や態度を取れば、向こうがいい風に捉えられてどんどん迫ってくるから冷静に。。
息を吐き歩みを進めようとした時だった。
「先生、おはようございます。」
さっきまで佐伯に会ったら冷静にしないとと内心で言い聞かせていたのに…構える暇もないまま佐伯が挨拶をしてきた。
いきなりのことで少しだけ肩をビクつかせてしまったがすぐいつも通りに口を開く。
「ああ、おはよう。佐伯。」
「…うん。」
普段滅多に笑わない佐伯が口元を緩ませ俺を見つめてくる。
それについトクンと胸が高鳴った。
な、何なんだ…その顔はっ…
俺は戸惑いながらも顔を逸らし佐伯の横を通り過ぎようとした瞬間 ___
佐伯の手が俺の手に触れた。
人差し指で俺の手の平をスルリとなぞって…
その触り方にドキッとしてパッと手を離し小走りにその場を後にする。
ある程度、離れた廊下の真ん中でしゃがみ込む。
今の触り方っ…
普通に触れた…とかでは無く熱を持たせるような何とも意味深な触れ方に冷静さがガタガタと崩れ落ちる。
あれだけ決意を固めていたというのに…
呆気なく終わって…
情けない自分にため息を吐く。
「馬鹿じゃないのか…自分…」
髪を掻きながら深呼吸して俺は職員室へと向かった。