先生、俺が教えてあげる。キスも全部
第5章 人気者
「先生、おはようございます。」
廊下を歩いていると背後から軽やかに挨拶してくる…生徒。。
振り返らなくてもわかる。
「…ああ、おはよう。佐伯。」
引き攣りながらも顔を向け挨拶を返し去ろうとすれば、佐伯は口元を上げながら爆弾発言を投げかけてくる。
「…先生、好きですよ。」
他に聞こえないように俺だけに聞こえるような声でそう言う佐伯に俺は額に青筋が浮かぶ。
「っ…あのな、佐伯。一言要らな__」
「はいはい。じゃあ先生の授業楽しみに待ってるから。」
物怖じせずにこやかにそれだけ告げて手を振り去って行く佐伯。
最近はこんなことばかりだ。
暇さえあれば口説いてきて「好きだ」と伝えてくる。
それに俺は交わしたり、あまり変なこと言ってきた場合は教科書で頭を叩いたり…。
飽きずに向かってくる佐伯に俺はある意味感心していた。
よくもまあ…、ここまでしてくるよなぁ。
若いって恐ろしい…。。
ため息を付いていると女子生徒数人の黄色い声が聞こえてきた。
「キャー♡!佐伯くんよっ…!」
「カッコイイ…。無表情だけどまたそこが良いんだよねぇ♡」
「冷たい言葉もなんか許せちゃう♡」
へぇ……凄い人気だな。
チラッと佐伯の方へ視線を向ければ、女子が佐伯を囲んでいて…
もはやアイドルだ。
顔だけは良いからな、アイツ。
じーと見ていると背後からポンと肩を叩かれた。
「うわっ…!って、、村瀬先生…。」
びっくりして振り返れば、村瀬先生が笑顔で片手を上げ挨拶をしてくる。
「よっ!相変わらずだなぁ。お前の生徒は。」
顎で佐伯の方を示し面白そうな顔をして言う村瀬先生に俺は苦笑いを浮かべる。