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機動戦士ガンダム~砂塵の恋~

第2章 クラウレ・ハモン

「やれやれ、少し飲み過ぎてしまったようだ。今日はよく口が回りやがる」

モスコは写真の女のことを語り始めた。
この写真の女こそがモスコが背負っている砂の十字架である。

昔、モスコはコロニーの街の酒場で雇われていた。酒場を巡る流しの歌い手で、モスコが働く酒場にも時々歌いに来ていたのが写真の女、クラウレ・ハモンである。

モスコはハモンに惹かれていた。
だが、ハモンには愛人がいた。ジオンの中でも有力な軍人で、青い巨星と崇められるランバ・ラルという男である。

ハモンがラルの愛人だと知ってもモスコはハモンを想い続けた。

そんなある日、店で少し酒を飲んだラルが真剣な眼差しでモスコにハモンのことが好きかと言った。優秀な軍人だから観察眼が鋭い。

モスコの様子からハモンのことを愛しているのを見抜いたのであろう。
奇しくも昨晩はハモンを想って自慰をした。それも見抜かれているような鋭い視線であった。

もう殺されるのかと思った。
モスコが震えながら頷くとラルは豪快に笑った。

「いい眼をしている、気に入ったぞ、小僧」とラルはまた豪快に笑う。

「どうだ、ワシに勝ってハモンを抱いてみるか。だが、ワシにはそう簡単には勝てないし、ハモンもああ見えて手強い女だぞ」

ラルは愉快そうに笑って酒を飲んだ。
こうして大将のラル自らのスカウトによってモスコはラル隊に入隊した。

ラルは度々戦場にハモンを同伴した。
戦場に愛人を同伴するなど非常識なことではあるが、ハモンも優秀な指揮官であった。

ハモンは酒場でも人気があったが、ラル隊の兵士たちも皆ハモンを慕っていた。
ハモンは決してラル以外の男が手を出すのを許さなかったし、ラルは部下を大事にする漢だったので、兵士たちは皆ラルを慕い、ハモンのことも姐さんと慕っていた。
モスコもいつの間にかハモンのことを姐さんと慕うようになっていた。

戦場に散ったジオンのプリンス、ガルマ・ザビ追討の命を受けてラル隊は地球に降りた。

この砂漠の街の飲み屋でラル隊が作戦前の宴を楽しんでいると一人の少年が先客としていた。
少年は弱気そうに見える反面獣のような眼をしていて、ハモンにしては珍しく気に入って声をかけた。

ハモンが食事をご馳走しようとするのを少年は「僕は乞食じゃないですし・・」と断った。




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