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冬のニオイ

第17章 Don't you love me

【智side】

会計を済ませて近くにある薬局へ回ると、時刻はもう昼近い。

オイラが最後の客だったみたいで他に誰もいないから、長椅子に座って待つ間、スマホを取り出した。
会社に病院へ行った結果を連絡しないといけない。

流石に会社の電話番号ぐらいは憶えてるから、公衆電話を使えばいいんだけど、いつまでもロックが掛かったままにはしておけないし。

機内モードになっているせいか電池の消耗は遅くて、たまたま潤が使ってるスマホと充電ケーブルが同じだったから、泊ってる時にオイラのも充電もさせてもらってた。

『PINロックにしたから、さとしくんだったらカイジョできるよ。
4ケタのすうじね』

タツオミが言ってたことを思い出して、待っている間、心当たりの数字を取りあえず入力してみる。

4ケタの暗証番号、って言ったら、オイラが使うのはこれだよなぁ。



1126→ブッポン。

6211→同じくブッポン。

実家の電話番号の下4ケタ→ブッポン。

かーちゃんの誕生日→ブッポン。



ん~……。

あ、そうか、設定したのはタツオミなんだから、タツオミが知らない番号なわけないんだ。
いくらなんでも、オイラのかーちゃんの誕生日をタツオミが知ってるわけない。

タツオミとオイラが共通で知ってる番号って何だろ?
そんなのないよね?

それにしても、タツオミも不思議な子供だよなぁ、と出会ってからのことを思い返す。
翔くんと話したことがある、みたいな感じだったけど。
オイラのこと、いったい何を話したんだろう。

あ! もしかして……。

思いついた別の数字を入力してみた。



0125→ブッポン。



やっぱりダメか。
だよな……。

昔、翔くんと付き合ってた頃、オイラはキャッシュカードの暗証番号を0125にしてた。

それを知った翔くんが嬉しそうにデレデレしながら、これじゃぁ、セキュリティー上危ないから、って言って。
数字を引っくり返したものに変更するように言われたんだ。

0125じゃなくて5210にした方が良いよ、って。

それから、俺も6211にする、って言って。
鼻の下を伸ばして、唇をンッ、ってしながら、照れているのをごまかしてた。

懐かしく思い出しながら、指が動いて入力する。



5210。



「マジか……」

スマホのロックが解除された。


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