冬のニオイ
第18章 Face Down:Reborn
【翔side】
「ねぇ、一緒に事故に遭った人のこと教えてくれる?」
アサリが沢山入ったスープにバターロールを浸して食べている時、智君が言った。
「……なんで?」
「その人ね、オイラの大切な人なんだ」
「……ふうん」
俺は心臓がドキドキするのを感じながら、関心のない素振りで返事をする。
「ずっと長いこと会えなかったの。
だから、どんな様子だったか気になって。
タツオミはその人とどんな話をしたの?」
どこか探りを入れてるような、遠慮してる口調だ。
「……わかんない、わすれた」
実は事故の後でタツオミの中の人になってる、なんて言えるわけがない。
目が合わないように下を向いて、もうそれ程熱くないスープを冷ますのに集中した。
「そっか……」
智君の声が、心なし、ガッカリしたように聞こえる。
「キタムラさんに聞いたんだけど、その人、オイラに会おうとして事故にあったらしいんだ。
どうしてオイラに会いたかったのかな……。
タツオミ、何か知らない……?」
不安そうに訊いてくるから、申し訳ない気持ちになる。
俺は目の前にあったボックスティッシュから一枚引き抜くと、口を拭った。
腹が一杯になったせいか、なんだか急に頭がぼんやりしてきた。
「さとしくんは、そのひとに、あいたいとおもってたの?」
「うーん、そうだねぇ……。
会ったらいけないと思ってたし……会えるなんて思ってなかったからね……」
迷うような口ぶりに、やっぱり、と思う。
ダメだ、眠い。
目を開けてるのが辛くなってきた。
「タツオミ? 眠くなった?」
「……うん」
上半身を起こしているのもしんどくて、目の前の食器をどかしテーブルに体を伏せる。
「翔くん……?」
智君が心配そうに声をかけてくる。
翔くん、って聞こえた気がして嬉しい。
大丈夫だよ、眠いだけだから。
「おきざりにして、ごめ……」
「え?」
もう口が回らない。
「しんじ、て、やれ、なくて……」
「翔くん? 大丈夫?」
自分の呼吸が寝息みたいになってるのが、やけにハッキリ聞こえて。
逆らえないような眠気で、もう話せない。
そう言えば、タツオミ君から、睡眠を沢山とるように、って言われてた。
寝不足だとどうなるんだっけ。
ああ、智君。
ずっと愛してたよ。
俺の魂は、いつも貴方の傍にいる。
「ねぇ、一緒に事故に遭った人のこと教えてくれる?」
アサリが沢山入ったスープにバターロールを浸して食べている時、智君が言った。
「……なんで?」
「その人ね、オイラの大切な人なんだ」
「……ふうん」
俺は心臓がドキドキするのを感じながら、関心のない素振りで返事をする。
「ずっと長いこと会えなかったの。
だから、どんな様子だったか気になって。
タツオミはその人とどんな話をしたの?」
どこか探りを入れてるような、遠慮してる口調だ。
「……わかんない、わすれた」
実は事故の後でタツオミの中の人になってる、なんて言えるわけがない。
目が合わないように下を向いて、もうそれ程熱くないスープを冷ますのに集中した。
「そっか……」
智君の声が、心なし、ガッカリしたように聞こえる。
「キタムラさんに聞いたんだけど、その人、オイラに会おうとして事故にあったらしいんだ。
どうしてオイラに会いたかったのかな……。
タツオミ、何か知らない……?」
不安そうに訊いてくるから、申し訳ない気持ちになる。
俺は目の前にあったボックスティッシュから一枚引き抜くと、口を拭った。
腹が一杯になったせいか、なんだか急に頭がぼんやりしてきた。
「さとしくんは、そのひとに、あいたいとおもってたの?」
「うーん、そうだねぇ……。
会ったらいけないと思ってたし……会えるなんて思ってなかったからね……」
迷うような口ぶりに、やっぱり、と思う。
ダメだ、眠い。
目を開けてるのが辛くなってきた。
「タツオミ? 眠くなった?」
「……うん」
上半身を起こしているのもしんどくて、目の前の食器をどかしテーブルに体を伏せる。
「翔くん……?」
智君が心配そうに声をかけてくる。
翔くん、って聞こえた気がして嬉しい。
大丈夫だよ、眠いだけだから。
「おきざりにして、ごめ……」
「え?」
もう口が回らない。
「しんじ、て、やれ、なくて……」
「翔くん? 大丈夫?」
自分の呼吸が寝息みたいになってるのが、やけにハッキリ聞こえて。
逆らえないような眠気で、もう話せない。
そう言えば、タツオミ君から、睡眠を沢山とるように、って言われてた。
寝不足だとどうなるんだっけ。
ああ、智君。
ずっと愛してたよ。
俺の魂は、いつも貴方の傍にいる。