冬のニオイ
第19章 negai
【潤side】
「最終的に櫻井に会うかどうかを決めるのは大野の自由だし、自分が決断した結果を受け止めるのも自己責任ってやつでしょうね。
苦しむことになるかもしれませんが、その苦しみは大野のものです。
他人が奪って良いものでは、ないんじゃないかな。
俺は個人的には櫻井の気持ちを知っているので、とにかく、何とか意識が戻って、回復して欲しい。
そして、大野だけでなく櫻井も、どのような結果になっても、過去から解放されるよう願っています」
「…………」
岡田氏が静かに語る声を聞きながら、俺はテーブルに置かれたコーヒーカップをただ眺めていた。
いつの間にか、意地になって負けまいとする気持ちは消えている。
智が過去としっかり向き合って答えを出したら、次は俺を見てくれるのだろうか。
それとも櫻井さんを……。
「松本さんは、ご自分の自由と責任で、思う通りに行動されたらいいと思いますよ。
ふふっ、大野はああ見えて頑固ですから、いろいろ大変だとは思いますけどね。
警戒心の強いあいつが松本さんとお付き合いをしているなら、あなたのことを信頼してるってことです。
あいつは昔から、一緒に居て気を遣う人間とは徹底して距離を置くヤツでしたから、貴方と居るのは心地良かったんじゃないですかね。
あなたが必要だったんでしょう」
「そう、でしょうか」
付き合って欲しいという申し出は断られてしまったけど、少しはあの人の慰めになっていたのだろうか。
まだ、望みはある?
そう願うしかない。
「松本さん。
僕は思うんですが、状況は常に常に変わっていくものです。
大野が櫻井に会うのか、会わないのか。
櫻井が回復するのか、そうでないのか。
もしかしたら、それによって大野の気持ちも変わるかもしれないし、そうでないかもしれません。
でもあなたの気持ちはあなたのものです。
状況が問題なのではなく、あなたの望みを優先されたらいいと思います。
どういう自分でいたいか。
どういう現実を望んでいるのか、ですね」
いつの間にか俯いてしまっていた顔を上げると、岡田氏は最初に挨拶をした時と全く同じ顔でニッと笑った。
やっぱり、食えないタイプの人だ。
俺の本当の望み。
願い。
智と一緒に居たい。
あの人に、愛されたい。
「最終的に櫻井に会うかどうかを決めるのは大野の自由だし、自分が決断した結果を受け止めるのも自己責任ってやつでしょうね。
苦しむことになるかもしれませんが、その苦しみは大野のものです。
他人が奪って良いものでは、ないんじゃないかな。
俺は個人的には櫻井の気持ちを知っているので、とにかく、何とか意識が戻って、回復して欲しい。
そして、大野だけでなく櫻井も、どのような結果になっても、過去から解放されるよう願っています」
「…………」
岡田氏が静かに語る声を聞きながら、俺はテーブルに置かれたコーヒーカップをただ眺めていた。
いつの間にか、意地になって負けまいとする気持ちは消えている。
智が過去としっかり向き合って答えを出したら、次は俺を見てくれるのだろうか。
それとも櫻井さんを……。
「松本さんは、ご自分の自由と責任で、思う通りに行動されたらいいと思いますよ。
ふふっ、大野はああ見えて頑固ですから、いろいろ大変だとは思いますけどね。
警戒心の強いあいつが松本さんとお付き合いをしているなら、あなたのことを信頼してるってことです。
あいつは昔から、一緒に居て気を遣う人間とは徹底して距離を置くヤツでしたから、貴方と居るのは心地良かったんじゃないですかね。
あなたが必要だったんでしょう」
「そう、でしょうか」
付き合って欲しいという申し出は断られてしまったけど、少しはあの人の慰めになっていたのだろうか。
まだ、望みはある?
そう願うしかない。
「松本さん。
僕は思うんですが、状況は常に常に変わっていくものです。
大野が櫻井に会うのか、会わないのか。
櫻井が回復するのか、そうでないのか。
もしかしたら、それによって大野の気持ちも変わるかもしれないし、そうでないかもしれません。
でもあなたの気持ちはあなたのものです。
状況が問題なのではなく、あなたの望みを優先されたらいいと思います。
どういう自分でいたいか。
どういう現実を望んでいるのか、ですね」
いつの間にか俯いてしまっていた顔を上げると、岡田氏は最初に挨拶をした時と全く同じ顔でニッと笑った。
やっぱり、食えないタイプの人だ。
俺の本当の望み。
願い。
智と一緒に居たい。
あの人に、愛されたい。