冬のニオイ
第22章 YOUR SONG
【翔side】
ハッと気がつくと俺は食堂のテーブルに着いていて、目の前には食べかけのパンケーキが乗った皿がある。
「キタムラさん、きょうはなんにち?」
俺が話しかけると、キタムラさんは表情を曇らせるようになっていた。
多分、俺が本物のタツオミ君ではないと疑われている。
それとも多重人格と見なされているのか……。
「1月19日、金曜日でございます」
この肉体に留まっていられるのは誕生日の25日までだ。
いや、そこまで保つかどうかもあやしい。
智君に一刻も早く会わないといけない。
「いま、なんじ?
キタムラさん、さとしくんにデンワしてくれた?」
「……ぼっちゃん。
大野さんはお仕事で外出中でした。
本日は金曜日ですから、明日と明後日はお休みです。
また来週にでもお電話を入れてみましょう」
「それじゃ、まにあわない」
あれ以来、タツオミ君の魂には会えなかった。
あの小さな駅のホームにも行けてない。
でも、前に、25日には俺はこのタツオミ君の肉体からは弾かれると聞いた。
普通は誕生日には本来の肉体との絆が強まるから、そっちに呼び戻される(結果としてタツオミ君の肉体からは弾かれることになる)筈なんだけど。
俺の場合は不慮の事故で自分の体から抜けてしまっているし、戻ろうとしても後悔の気持ちがあまりにも強いから難しいかもしれない、って。
『何かあったらキタムラさんを味方につけるといいよ。
あの人はお兄さんを助けてくれる』
タツオミ君の言葉を思い出す。
もう、信じてお願いするしかない。
それしか。
背筋を伸ばして腹に力を入れてから、真っ直ぐに彼を見た。
「……キタムラさん。
しんぱいしなくても、あなたのだいじなタツオミくんは、ちゃんともどってくるよ」
「ぼっちゃん?」
「だから今だけ、ぼくのたのみをきいてください。
どうしても、さとしくんに会わないといけないんです。
たぶん、さとしくんに会えたら、ぼくはこのカラダからきえるとおもいます。
あなたのタツオミくんも、もどってくる。
キタムラさん、たすけてください。
おねがいします。
おねがいします。
おねがいします」
真っ白なクロスが掛かったテーブルに向かって、何度も頭を下げた。
ハッと気がつくと俺は食堂のテーブルに着いていて、目の前には食べかけのパンケーキが乗った皿がある。
「キタムラさん、きょうはなんにち?」
俺が話しかけると、キタムラさんは表情を曇らせるようになっていた。
多分、俺が本物のタツオミ君ではないと疑われている。
それとも多重人格と見なされているのか……。
「1月19日、金曜日でございます」
この肉体に留まっていられるのは誕生日の25日までだ。
いや、そこまで保つかどうかもあやしい。
智君に一刻も早く会わないといけない。
「いま、なんじ?
キタムラさん、さとしくんにデンワしてくれた?」
「……ぼっちゃん。
大野さんはお仕事で外出中でした。
本日は金曜日ですから、明日と明後日はお休みです。
また来週にでもお電話を入れてみましょう」
「それじゃ、まにあわない」
あれ以来、タツオミ君の魂には会えなかった。
あの小さな駅のホームにも行けてない。
でも、前に、25日には俺はこのタツオミ君の肉体からは弾かれると聞いた。
普通は誕生日には本来の肉体との絆が強まるから、そっちに呼び戻される(結果としてタツオミ君の肉体からは弾かれることになる)筈なんだけど。
俺の場合は不慮の事故で自分の体から抜けてしまっているし、戻ろうとしても後悔の気持ちがあまりにも強いから難しいかもしれない、って。
『何かあったらキタムラさんを味方につけるといいよ。
あの人はお兄さんを助けてくれる』
タツオミ君の言葉を思い出す。
もう、信じてお願いするしかない。
それしか。
背筋を伸ばして腹に力を入れてから、真っ直ぐに彼を見た。
「……キタムラさん。
しんぱいしなくても、あなたのだいじなタツオミくんは、ちゃんともどってくるよ」
「ぼっちゃん?」
「だから今だけ、ぼくのたのみをきいてください。
どうしても、さとしくんに会わないといけないんです。
たぶん、さとしくんに会えたら、ぼくはこのカラダからきえるとおもいます。
あなたのタツオミくんも、もどってくる。
キタムラさん、たすけてください。
おねがいします。
おねがいします。
おねがいします」
真っ白なクロスが掛かったテーブルに向かって、何度も頭を下げた。