冬のニオイ
第23章 サーカス
【智side】
「潤! やめろっ、てっ」
返事はない。
本気だ。
どんどん壁際に追い詰められていく。
重なろうとする顔を避けながら暴れていると、背中が壁に触った。
「潤っ、やめっ、んっ」
逃げきれずに唇が重なってしまう。
オイラは歯を食いしばって口を開けまいとしながら、腕で潤を押し返そうとしたんだけど。
落ちていた図面を踏んだのか、足が突然ズルッと滑って腰が落ちた。
その隙に腕をとられて、両手を壁に押し付けられる。
手の甲にバンッという衝撃があって、びっくりして開けた口に舌が入ってきた。
首を振って逃げようとするのを追いかけてくる。
嫌だ。
嫌だ!!
オイラは脚を持ち上げて潤の腹の辺りを思い切り蹴飛ばした。
手応えがハッキリあって、潤が後ろに倒れる。
「アッ!!」
潤の声と同時に、ガンッ、という鈍い音がした。
どこか打ったのかもしれないと思ったけど、オイラは床に座り込んで荒い息を吐くのに精いっぱいで。
「い、ってぇ……」
ゆっくり起き上がった潤は鼻を押さえてて、指の間から血が流れてきてた。
「潤っ、血がっ」
慌ててティッシュを探すけど遠い。
四つん這いのまま潤に近づいて、ポケットからハンカチを取り出す。
けど、差し出しても受け取ろうとしない。
「ハッ、だっせぇ……」
「どこか切った? 見せてっ」
「いいよ……鼻血だろ……」
言ってるそばから血がポタポタと落ちて、潤のシャツに染みを作った。
痛みで歪んだ潤の顔がショックで涙が出てくる。
「ごめん、潤……」
「はっ、やめろよ。
自分を襲おうとした奴を心配してどーすんだ。
あんたってホントに……」
きつく眉間を寄せて下を向いた潤の目から、涙が零れてた。
後方からスマホのバイブレーションが聞こえる。
「着信だろ、出なよ」
潤はハンカチを受け取って傷を押さえると、そう言って立ち上がった。
一瞬見えた顔が血だらけで。
「潤、病院に」
「いいから。大事な連絡だったら困るだろ?
櫻井さんからかもよ?」
「あ……」
言われてとっさに目が端末を探す。
誰からの着信なのか、それだけ確認しようと思ってスマホを手に取った。
キタムラさんからだ。
「潤、手当てするから、ちょっとだけ待っ」
振り返って言いかけたけど、もうそこに彼の姿はなかった。
「潤! やめろっ、てっ」
返事はない。
本気だ。
どんどん壁際に追い詰められていく。
重なろうとする顔を避けながら暴れていると、背中が壁に触った。
「潤っ、やめっ、んっ」
逃げきれずに唇が重なってしまう。
オイラは歯を食いしばって口を開けまいとしながら、腕で潤を押し返そうとしたんだけど。
落ちていた図面を踏んだのか、足が突然ズルッと滑って腰が落ちた。
その隙に腕をとられて、両手を壁に押し付けられる。
手の甲にバンッという衝撃があって、びっくりして開けた口に舌が入ってきた。
首を振って逃げようとするのを追いかけてくる。
嫌だ。
嫌だ!!
オイラは脚を持ち上げて潤の腹の辺りを思い切り蹴飛ばした。
手応えがハッキリあって、潤が後ろに倒れる。
「アッ!!」
潤の声と同時に、ガンッ、という鈍い音がした。
どこか打ったのかもしれないと思ったけど、オイラは床に座り込んで荒い息を吐くのに精いっぱいで。
「い、ってぇ……」
ゆっくり起き上がった潤は鼻を押さえてて、指の間から血が流れてきてた。
「潤っ、血がっ」
慌ててティッシュを探すけど遠い。
四つん這いのまま潤に近づいて、ポケットからハンカチを取り出す。
けど、差し出しても受け取ろうとしない。
「ハッ、だっせぇ……」
「どこか切った? 見せてっ」
「いいよ……鼻血だろ……」
言ってるそばから血がポタポタと落ちて、潤のシャツに染みを作った。
痛みで歪んだ潤の顔がショックで涙が出てくる。
「ごめん、潤……」
「はっ、やめろよ。
自分を襲おうとした奴を心配してどーすんだ。
あんたってホントに……」
きつく眉間を寄せて下を向いた潤の目から、涙が零れてた。
後方からスマホのバイブレーションが聞こえる。
「着信だろ、出なよ」
潤はハンカチを受け取って傷を押さえると、そう言って立ち上がった。
一瞬見えた顔が血だらけで。
「潤、病院に」
「いいから。大事な連絡だったら困るだろ?
櫻井さんからかもよ?」
「あ……」
言われてとっさに目が端末を探す。
誰からの着信なのか、それだけ確認しようと思ってスマホを手に取った。
キタムラさんからだ。
「潤、手当てするから、ちょっとだけ待っ」
振り返って言いかけたけど、もうそこに彼の姿はなかった。