冬のニオイ
第24章 むかえに行くよ
【智side】
電話に出るべきか潤を追いかけるべきか迷ってるうちに、着信バイブが止まる。
同時に1階の駐車場から車が出て行った音がした。
「……っ……なんだよ……」
スマホを握った自分の手首に、潤に掴まれた痕が赤く残ってる。
オイラの指に着いてた潤の血がスマホケースを汚してた。
あんなに血が出てたのに一人で出て行って。
「潤っ……うっ……」
全部オイラが悪い。
ごめん、潤。
追い詰めたのは俺のせいだ。
気持ちに応えられないのに気を持たせて。
好きな相手を恨むことがどんなに辛いか、オイラだって十分知ってるのに。
その上、ケガまでさせてしまった。
泣く権利なんかない。
取りあえず顔と手を洗って鼻をかんで。
なんとか人と話しても大丈夫かな、と思いキタムラさんに折り返しで電話を入れる。
応答したのはタツオミだった。
『さとしくんっ』
懐かしいイントネーションを聴いたら自然に顔が緩んだ。
引っ込めた涙がまた出て来る。
もう泣き笑いで情緒不安定もいいところだ。
オッサンのくせに情けない。
「しょ、あ、タ、タツオミ君。
久しぶりだね……。
オイラ、ちょっといそが……忙しくて……。
連絡できなくて、ごめんね」
『……さとしくん?
もしかして、ないてる?』
「ふふっ、泣いてないよ……。
それより、どうしたの?」
『でもこえが……いまどこにいるの?
オレもそっちにいくっ』
翔くん。
やっぱりタツオミの中身は翔くんなんだよね。
間違いない。
「でもタツオミは子供なんだから、こんな時間に外に出たらだめだよ。
危ないでしょう?
今ね、ちょっと寒くて鼻声なんだ」
『またネツが出たんじゃない?
だいじょうぶ?』
「大丈夫だよ……ありがとう……」
話しながらティッシュを取って来て床の血を拭いた。
自分の涙がポタポタと落ちて、潤の血と混ざる。
潤、痛かったよね。
ごめんね……。
『あのね、あしたおやすみでしょ?
オレ、さとしくんにあいたいの』
「いいよ……っ……ウチにおいで……」
『……さとしくん、ホントにだいじょうぶ?』
「うん……ふふっ……タツオミは心配性だ。
オイラもタツオミに会いたいよ」
『ほんとっ? よかったぁ。
じゃぁ、まち合わせしてくれる?』
「いいよ」
タツオミが指定したのは、翔くんと最後に会ったカフェだった。
電話に出るべきか潤を追いかけるべきか迷ってるうちに、着信バイブが止まる。
同時に1階の駐車場から車が出て行った音がした。
「……っ……なんだよ……」
スマホを握った自分の手首に、潤に掴まれた痕が赤く残ってる。
オイラの指に着いてた潤の血がスマホケースを汚してた。
あんなに血が出てたのに一人で出て行って。
「潤っ……うっ……」
全部オイラが悪い。
ごめん、潤。
追い詰めたのは俺のせいだ。
気持ちに応えられないのに気を持たせて。
好きな相手を恨むことがどんなに辛いか、オイラだって十分知ってるのに。
その上、ケガまでさせてしまった。
泣く権利なんかない。
取りあえず顔と手を洗って鼻をかんで。
なんとか人と話しても大丈夫かな、と思いキタムラさんに折り返しで電話を入れる。
応答したのはタツオミだった。
『さとしくんっ』
懐かしいイントネーションを聴いたら自然に顔が緩んだ。
引っ込めた涙がまた出て来る。
もう泣き笑いで情緒不安定もいいところだ。
オッサンのくせに情けない。
「しょ、あ、タ、タツオミ君。
久しぶりだね……。
オイラ、ちょっといそが……忙しくて……。
連絡できなくて、ごめんね」
『……さとしくん?
もしかして、ないてる?』
「ふふっ、泣いてないよ……。
それより、どうしたの?」
『でもこえが……いまどこにいるの?
オレもそっちにいくっ』
翔くん。
やっぱりタツオミの中身は翔くんなんだよね。
間違いない。
「でもタツオミは子供なんだから、こんな時間に外に出たらだめだよ。
危ないでしょう?
今ね、ちょっと寒くて鼻声なんだ」
『またネツが出たんじゃない?
だいじょうぶ?』
「大丈夫だよ……ありがとう……」
話しながらティッシュを取って来て床の血を拭いた。
自分の涙がポタポタと落ちて、潤の血と混ざる。
潤、痛かったよね。
ごめんね……。
『あのね、あしたおやすみでしょ?
オレ、さとしくんにあいたいの』
「いいよ……っ……ウチにおいで……」
『……さとしくん、ホントにだいじょうぶ?』
「うん……ふふっ……タツオミは心配性だ。
オイラもタツオミに会いたいよ」
『ほんとっ? よかったぁ。
じゃぁ、まち合わせしてくれる?』
「いいよ」
タツオミが指定したのは、翔くんと最後に会ったカフェだった。