冬のニオイ
第24章 むかえに行くよ
【智side】
時間と場所を確認して、ばいばい、って電話をきる。
床を拭いたティッシュを集めながら、どうしようもなく泣けてきた。
イイ年をして何をしてるんだろ、と自分に呆れたけど、どうせ誰も見てないしと開き直って鼻をかんだ。
オッサンだって泣けるものは泣けるんだから仕方ないだろ、と誰にともなく言い訳する。
オイラはダメな奴で。
昔、翔くんが連絡をくれるのを待つことが出来なかった。
あの時翔くんは、オイラにちゃんと訊いてくれたのに、幼稚だった俺は被害者ぶって、自分だけが辛いと思ってた。
翔くんに比べて冴えない自分がみじめで、祝福されない関係も不安で。
だから、やっぱり上手く行くはずなかったんだ、って、逃げたんだ。
全部話せばわかってくれる人だ、って思えなかったのはオイラが弱かったから。
信じることが出来なかったのはオイラの方。
今、10年たって。
翔くんはオイラに会おうとして事故に遭って、ずっと意識が戻らない。
俺はそんなこと全然知らないで、酔って男に抱かれてた。
翔くん。
潤の言った通りなんだよ。
オイラは、翔くんを忘れたくていろんな奴と寝た。
相手の顔も思い出せないし、何人とやったのかもわかんない。
潤が言うように、シレッとして君の前には立てないね。
でもさ。
オイラはどうしようもなくダメな奴だから、こんな自分のくせに、ずうずうしく神様にお願いする。
翔くんが目覚めますように。
もしもやり直せるなら、もう二度と君のそばを離れない。
もう後悔したくない。
オイラがしてきたことを君が知ったら、今度こそ本当にダメかもしれないけど。
オイラが潤を拒んだように、翔くんに拒まれるかもしれないけど。
電話が終わってから、結局、図面を刷り直して。
残っていた仕事を全部やれるところまで片付けた。
事務所を出た時には23時を回ってて、静まりかえった夜の道をマンションまで歩きながら、自分の歩幅がだんだん小さくなってしまうのに気がついて。
立ち止まるな、がんばれ俺、と自分に言い聞かせ、翔くんとお揃いのコートの襟を合わせる。
見上げた月は、いつもより黄色くて。
ポツポツと浮かんでる墨色の雲がゆっくりと風に流れて行くのを眺めながら、時間をかけて家に帰った。
時間と場所を確認して、ばいばい、って電話をきる。
床を拭いたティッシュを集めながら、どうしようもなく泣けてきた。
イイ年をして何をしてるんだろ、と自分に呆れたけど、どうせ誰も見てないしと開き直って鼻をかんだ。
オッサンだって泣けるものは泣けるんだから仕方ないだろ、と誰にともなく言い訳する。
オイラはダメな奴で。
昔、翔くんが連絡をくれるのを待つことが出来なかった。
あの時翔くんは、オイラにちゃんと訊いてくれたのに、幼稚だった俺は被害者ぶって、自分だけが辛いと思ってた。
翔くんに比べて冴えない自分がみじめで、祝福されない関係も不安で。
だから、やっぱり上手く行くはずなかったんだ、って、逃げたんだ。
全部話せばわかってくれる人だ、って思えなかったのはオイラが弱かったから。
信じることが出来なかったのはオイラの方。
今、10年たって。
翔くんはオイラに会おうとして事故に遭って、ずっと意識が戻らない。
俺はそんなこと全然知らないで、酔って男に抱かれてた。
翔くん。
潤の言った通りなんだよ。
オイラは、翔くんを忘れたくていろんな奴と寝た。
相手の顔も思い出せないし、何人とやったのかもわかんない。
潤が言うように、シレッとして君の前には立てないね。
でもさ。
オイラはどうしようもなくダメな奴だから、こんな自分のくせに、ずうずうしく神様にお願いする。
翔くんが目覚めますように。
もしもやり直せるなら、もう二度と君のそばを離れない。
もう後悔したくない。
オイラがしてきたことを君が知ったら、今度こそ本当にダメかもしれないけど。
オイラが潤を拒んだように、翔くんに拒まれるかもしれないけど。
電話が終わってから、結局、図面を刷り直して。
残っていた仕事を全部やれるところまで片付けた。
事務所を出た時には23時を回ってて、静まりかえった夜の道をマンションまで歩きながら、自分の歩幅がだんだん小さくなってしまうのに気がついて。
立ち止まるな、がんばれ俺、と自分に言い聞かせ、翔くんとお揃いのコートの襟を合わせる。
見上げた月は、いつもより黄色くて。
ポツポツと浮かんでる墨色の雲がゆっくりと風に流れて行くのを眺めながら、時間をかけて家に帰った。