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冬のニオイ

第25章 愛を歌おう

【翔side】

「ありがとう。
じゃぁ、翔くん、何飲む?」

ああ、なんて懐かしい響だろう。
昔、数えきれない程交わした言葉だ。

「アイスのカフェラテにする」

「コーヒー飲んでも大丈夫なの?」

「うん、ねむくなるといけないから。
えっと、エスプレッソじゃなくて、ふつうのアイスコーヒーにぎゅうにゅうだったら子供でもダイジョウブだとおもう」

そっか、と言って、智君はお店の人に注文をしてくれた。



「翔くん、ニノと相葉ちゃん、憶えてる?」

テーブルに届いたドリンクを飲んでいると、不意に懐かしい名前があがる。

「おぼえてるよっ。
うわ、なつかしいなぁ。あの二人元気?」

智くんは、ふふっ、って笑って楽しそうに続けた。

「元気、元気。
あの二人ね、去年のクリスマスに結婚したんだよ」

「は? え、えええええっ!?
うそだろっ、マジで!?」

全く予想外の内容で、俺は本当に驚いた。

「ふふっ、マジで。驚いた?」

「驚いたなんてモンじゃないよ。
眠気が飛んだもん。
ええ? あの二人ってそうだったの?」

「うん。んふふっ」

思わず仰け反って両手で頭を抱えた俺を見て、智君は嬉しそう笑ってた。

「もう10年になるんだって」

「えっ、10年、って、じゃぁ」

俺達が別れた年から付き合い始めた、ってこと?

言い難くて上目遣いで見上げると、智君はちょっと困った顔をしたけど。

「オイラも今の会社に転職してからはあんまり会ってなくて、知ったのは最近なんだ。
なんかね、オイラと翔くんのことで、いろいろ思うところがあったんだって。
相葉ちゃんが頑張ったみたいで、勇気を出して告白したって言ってた。
そしたらニノが、10年別れなかったら結婚しよう、って条件? 出したらしくて」

「それで本当に結婚したんだ?」

「うん。ふふっ」

「す、っげぇ……」

俺も別に喧嘩したわけじゃないけど、あの二人は元々智君の友達だったし。
特にニノは智君のことを物凄く慕ってたから、あれ以来ずっと合わせる顔もなくて疎遠になってた。



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