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冬のニオイ

第25章 愛を歌おう

【翔side】

「ホントすごいよねぇ~、んふふっ。
オイラも年賀状でわかったの。
結婚しました、ってちっちゃく書いてあって、びっくりしたぁ。
ほんで連絡とって、お祝い何がいい? って訊いたんだけど……」

言って智君の表情が曇る。

「どうしたの?」

「ううん、物はいらないって言われたの。
良かったら遊びに来て、って。
一人で行ってあてられてもなぁ、と思ってたんだけどね。
オイラさ……翔くんが元気になったらまた昔みたいに4人で会いたいよ。
一緒に行ってくれる?」

無理して笑うみたいに、口角だけ吊り上げた。
でも俺は、戻れるかわかんないからハッキリ返事が出来なくて。
智君が淋し気だから、それには答えずに話を続ける。

「でも、10年て?」

「うん……最初はニノが断ったんだって。
人の気持ちは変わるから、って。
今はお互いに好きでも、どちらかが心変わりするかもしれないし、それに、周りの祝福は受けられないでしょ?
どこまで公にするか、とか、親に何て言うかとか……。
一生隠しごとすることになるかもしれないし、それに耐えられないと思う、って。
でも相葉ちゃんが、絶対にそんなことにはしない、って頑張って……結局ニノが、もしも10年続いたら結婚する、って約束するならOKだ、って言ったんだって」

「…………」

「最初は売り言葉に買い言葉みたいな感じだった、って言ってたよ。
そのうち、お互いに意地になって。
ふふっ、ケンカするたびに絶対に別れない、って言ってたらしい。
そんで10年経っちゃったから、しょうがなく結婚した、ってニノが。
まぁ、結婚って言っても、法的には養子縁組だけどね。
ふふっ、あの二人らしいよね」

「そう、なんだ……」

俺達に比べてあの二人は、何て大人だったんだろう。
智君が淋しそうな顔をする理由が分かった。


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