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冬のニオイ

第6章 Imaging Crazy

【智side】

あの朝、目が覚めた時。
自分を抱きしめてる素肌の感触と温もりに気づいて、何故だかそれが翔くんだと思ってしまった。

きっと、岡田っちに会ったりしたから、何か感覚がおかしくなってたんだ。



パーティーで思いがけない昔の友人に会って。
懐かしい人の懐かしい名前を聞いて、自分でも驚くほどに混乱した。

岡田っちに話しかけられる前に、会場で、なんだか翔くんらしき人を見たような気がしてたんだ。
その時も、一瞬息が止まるかと思った。
久しぶりの感覚にめまいがして、立っているのが辛くなった。



元々パーティーなんて苦手だし、頃合いを見て抜け出してしまおうと決めて、ホールの壁際に並べられた椅子に座って休んでいたら声をかけられた。

予想もしなかった場所で思いがけない名前を聞いたら、また、心臓が苦しいような感じが迫って来て。
気がついたら、オイラはその場から逃げ出してた。

深く考えずに地下鉄で適当な電車に乗り。
この際、酒が飲めればどこでもいいや、ってさ。
たまたまアナウンスされた駅名から思い出した店へ行った。

それが、あんなことになっちゃうなんて。

店で潤に会ったところまでは何とか憶えてたけど、だらしないことに、ベッドインまでやらかしてしまったことは本当に記憶になかった。



泊った翌朝、目が覚める直前まで翔くんの夢を見てたんだ。
それで勘違いした。

昔と変わらず、って言うか、昔よりもっと優しくて穏やかな声がオイラを夢の中で呼んで。
ギュッ、って抱きしめられて。

翔くんの夢なんて、もう何年も見てなかったせいか涙が出そうだった。
意識がハッキリしてきても余韻が残ってて。
温かな肌が実際にオイラを抱きしめてたから、夢と現実がごっちゃになった。



寝呆けたまま幸せな気持ちで躰を摺り寄せたら、額に口づけられた感触があってさ。

「んふっ……しょお……」

嬉しくて、目をつむったままで呼びかけた。

ああ、翔くん、大好きだよ、って。

付き合ってた頃はいつもそうだったんだ。
抱き合って一緒に眠って、腕に包まれたまま迎えた朝は、好きだ、って、目が覚めるたびに思ってた。

「智……」

呼ばれた声が記憶の中のそれとは違ってて、オイラは心臓が飛び出るかと思った。


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