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冬のニオイ

第8章 Come back to me

【潤side】

大野さんとは、えーと、今日で4回目かな。

12月は現場が忙しいから、週末にのんびり会う暇はなくて。
でも、暢気に構えてると無かったことにされそうで、平日でも何でも俺の方からマメに誘うようにしてきた。

俺は前からこの人が好きだったけど、この人の方では俺のことは何とも思ってなかっただろうし。
去年の4月からの付き合いだから、仕事を通じてだって、共通の思い出は少ない。

イチから一つずつ信頼関係を築いていくには、焦らず、急かさず、マメに声を掛けていく。
これに尽きる。
って、いかにも営業マンの思考回路だな、と自分でも思うけど(笑)。

ふり向いて欲しかったんだ。
その他大勢の一人じゃなくてさ。
失敗でも何でも、あの晩、接点が出来たんだ。
俺のこと、ちゃんと恋愛対象として意識して欲しかった。



大野さんは最初、困った顔ばかりしてたけど、段々慣れてくれたんだと思う。
プライベートで会うごとに、少しずつリラックスしていってるような気がした。

やっぱり恋愛でも何でも、人との関係って信頼出来るかどうかだよ。
いくら本気だって口で言っても、信じてもらえなかったら話にならない。
傷つけたくなかったし、大切にしたかった。

年末に終電を逃したこの人を家に泊めた時、精一杯の忍耐で手を出さなかったのが良かったのかな(笑)。

少しずつでいいから、お互いのことを知っていって、俺のことを信頼してくれるといいなと思う。
そんで、いつかこの人が何の遠慮もなく、俺の前で声を出して笑ってくれたらいいな、って。
それが今の俺の願い。



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