冬のニオイ
第11章 アオゾラペダル
【智side】
「すごいね、さとしくん。
がんばったんだね……。
オレ、そんけいする」
鼻をすんっ、って鳴らしてオイラに言うんだ。
「タツオミ、どうしたの?
どっか痛いのか? 大丈夫?」
頷いてるから頭を撫でてやったら、オイラに抱きついてきて、さとしくんはすごい、って何度も言ってくれた。
「なんだよ……ふふっ、大げさだなぁ。
でも誉めてくれて嬉しいよ。
ありがとう」
ふふふっ。
変なの。
笑ってしまいながら、触れてる体温が愛おしく思えた。
それからキタムラさんに電話して。
向こうでは案の定、あわや誘拐か、と大騒ぎだったらしいけど、全てはまだ小さな子供が勝手にやらかしてしまったことだし、誰が悪いわけでもない。
最終的にはお互いにすみません、と何度も謝りあうことになった。
どうやらキタムラさんとオイラとの朝の電話を、タツオミは近くでちゃっかり聞いていたらしい。
オイラの家の場所をキタムラさんが何度か繰り返して復唱したから、それで見当をつけたようだ。
一人で電車に乗ってオイラのマンションまで来るなんて、近頃の子供って、ほんと侮れない。
お世話する方も大変なんだろう。
タツオミがスマホをロックした件を伝えたら、キタムラさんは唸るような溜息のような、何とも言えない声を出していた。
電話口でタツオミがごねたのもあり、夕方までオイラがタツオミと一緒に遊ぶ、ってことで了承を得る。
移動したら必ず連絡する、って約束して、帰りはタツオミを迎えに来てもらうことにした。
その後はタツオミがドラフターに触りたい、って言い出して。
そう言うだろうな、と思ってたから、製図の練習用の紙をセットして線を引いてしばらく遊んだ。
芯が平らに削れるようにシャープペンをくるくると回しながら。紙にかかる圧が均等になるよう手の力をコントロールして、一本の線の端から端までが同じ濃さと太さになるように引くんだよ、って教える。
タツオミは夢中になって、小さな手で、縦に、横に、何度も線を引いてた。
大真面目な顔で、オイラがお手本に引いて見せた線と自分が引いた線を見比べて。
ペンを持った右手を唇に当てて真剣に考えてる姿が、やっぱり翔くんにそっくりだった。
「すごいね、さとしくん。
がんばったんだね……。
オレ、そんけいする」
鼻をすんっ、って鳴らしてオイラに言うんだ。
「タツオミ、どうしたの?
どっか痛いのか? 大丈夫?」
頷いてるから頭を撫でてやったら、オイラに抱きついてきて、さとしくんはすごい、って何度も言ってくれた。
「なんだよ……ふふっ、大げさだなぁ。
でも誉めてくれて嬉しいよ。
ありがとう」
ふふふっ。
変なの。
笑ってしまいながら、触れてる体温が愛おしく思えた。
それからキタムラさんに電話して。
向こうでは案の定、あわや誘拐か、と大騒ぎだったらしいけど、全てはまだ小さな子供が勝手にやらかしてしまったことだし、誰が悪いわけでもない。
最終的にはお互いにすみません、と何度も謝りあうことになった。
どうやらキタムラさんとオイラとの朝の電話を、タツオミは近くでちゃっかり聞いていたらしい。
オイラの家の場所をキタムラさんが何度か繰り返して復唱したから、それで見当をつけたようだ。
一人で電車に乗ってオイラのマンションまで来るなんて、近頃の子供って、ほんと侮れない。
お世話する方も大変なんだろう。
タツオミがスマホをロックした件を伝えたら、キタムラさんは唸るような溜息のような、何とも言えない声を出していた。
電話口でタツオミがごねたのもあり、夕方までオイラがタツオミと一緒に遊ぶ、ってことで了承を得る。
移動したら必ず連絡する、って約束して、帰りはタツオミを迎えに来てもらうことにした。
その後はタツオミがドラフターに触りたい、って言い出して。
そう言うだろうな、と思ってたから、製図の練習用の紙をセットして線を引いてしばらく遊んだ。
芯が平らに削れるようにシャープペンをくるくると回しながら。紙にかかる圧が均等になるよう手の力をコントロールして、一本の線の端から端までが同じ濃さと太さになるように引くんだよ、って教える。
タツオミは夢中になって、小さな手で、縦に、横に、何度も線を引いてた。
大真面目な顔で、オイラがお手本に引いて見せた線と自分が引いた線を見比べて。
ペンを持った右手を唇に当てて真剣に考えてる姿が、やっぱり翔くんにそっくりだった。