冬のニオイ
第11章 アオゾラペダル
【智side】
タツオミと二人、手を繋いで歩きながら取りあえず会社に来た。
駐車場にはまだ潤の車が駐まってる。
設計事務所、と書いてある看板を見て、タツオミは凄く驚いた顔をしていた。
最初、キタムラさんに連絡するよりも、時間的に待ち合わせ場所のファミレスへ行った方が早いと思ったんだけど。
なんとタツオミは無断で出てきたそうで、自分の居場所が不明なのにキタムラさんが外に出る筈がない、行っても無駄だ、って言う。
あ~……ってなって黙ってたら、タツオミは急にオイラの仕事を訊いてきた。
子供ってホントに脈絡なく話が飛ぶ、っていうか、興味の対象がコロコロと変わる。
「まずはキタムラさんに連絡してから遊ぶ、って言ったでしょ。
あ、そっか、丁度良いから会社の電話を借りよう。
ちょっと歩くけどいい?」
オイラの言葉に目をキラキラさせる。
「うっそ、さとしくんのかいしゃ?
見たい、見たい! さとしくん、いまはなにしてるの?」
今は、って何だ?(笑)
ねーちゃんのとこの子もそうだけど、子供って妙に大人の口調を真似して喋るよね。
考えてみたら、オイラだってこのくらいの子供がいてもおかしくないんだ。
翔くんも。
翔くんの子供だったら、タツオミみたいな感じなのかもしれないなぁ。
そんな風に思えて、道中はぐれないように手をしっかり繋ぐ。
オイラの仕事は会社に着けばわかるよ、って答えた。
「さとしくんっ、いまはけんちくし?
すげぇ! いっきゅうけんちくし?」
タツオミは大人サイズのスリッパをパタパタ言わせながら、物珍しそうに事務所を歩き回って。
子供ならきっとドラフターが最初に気になるだろうと思ったんだけど、何故だか建築士の合格証が飾ってあるところで立ち止まる。
額縁を指さしながら後ろにいたオイラを振り返ると、何度もすげぇを連発した。
「がっこうにいったの?」
「ん~、2級はほとんど独学だね。
1級は資格取得のスクールみたいなとこに行った。
その頃はとーちゃんの会社で大工の仕事もしてたから、けっこう大変だったけどね。
オイラ頭良くないし。ふふっ」
「…………」
タツオミは何が面白いのか、オイラの合格証書の前から全然動かない。
後姿を眺めてると手が何度も顔をこすってる。
やっと振り返ったと思ったら、目が真っ赤だったから驚いた。
タツオミと二人、手を繋いで歩きながら取りあえず会社に来た。
駐車場にはまだ潤の車が駐まってる。
設計事務所、と書いてある看板を見て、タツオミは凄く驚いた顔をしていた。
最初、キタムラさんに連絡するよりも、時間的に待ち合わせ場所のファミレスへ行った方が早いと思ったんだけど。
なんとタツオミは無断で出てきたそうで、自分の居場所が不明なのにキタムラさんが外に出る筈がない、行っても無駄だ、って言う。
あ~……ってなって黙ってたら、タツオミは急にオイラの仕事を訊いてきた。
子供ってホントに脈絡なく話が飛ぶ、っていうか、興味の対象がコロコロと変わる。
「まずはキタムラさんに連絡してから遊ぶ、って言ったでしょ。
あ、そっか、丁度良いから会社の電話を借りよう。
ちょっと歩くけどいい?」
オイラの言葉に目をキラキラさせる。
「うっそ、さとしくんのかいしゃ?
見たい、見たい! さとしくん、いまはなにしてるの?」
今は、って何だ?(笑)
ねーちゃんのとこの子もそうだけど、子供って妙に大人の口調を真似して喋るよね。
考えてみたら、オイラだってこのくらいの子供がいてもおかしくないんだ。
翔くんも。
翔くんの子供だったら、タツオミみたいな感じなのかもしれないなぁ。
そんな風に思えて、道中はぐれないように手をしっかり繋ぐ。
オイラの仕事は会社に着けばわかるよ、って答えた。
「さとしくんっ、いまはけんちくし?
すげぇ! いっきゅうけんちくし?」
タツオミは大人サイズのスリッパをパタパタ言わせながら、物珍しそうに事務所を歩き回って。
子供ならきっとドラフターが最初に気になるだろうと思ったんだけど、何故だか建築士の合格証が飾ってあるところで立ち止まる。
額縁を指さしながら後ろにいたオイラを振り返ると、何度もすげぇを連発した。
「がっこうにいったの?」
「ん~、2級はほとんど独学だね。
1級は資格取得のスクールみたいなとこに行った。
その頃はとーちゃんの会社で大工の仕事もしてたから、けっこう大変だったけどね。
オイラ頭良くないし。ふふっ」
「…………」
タツオミは何が面白いのか、オイラの合格証書の前から全然動かない。
後姿を眺めてると手が何度も顔をこすってる。
やっと振り返ったと思ったら、目が真っ赤だったから驚いた。