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冬のニオイ

第12章 TOP SECRET

【翔side】

俺が曖昧に答えると、少しの間があって、止まっていた智くんの手がまた動き出した。
きっと視線を上の方に向けて、俺が言った言葉の意味を一生懸命考えてるんだろう。

「んーっと、それで……タツオミはどうしたの?」

「目がさめてから、どうしてもあいたくて、キタムラさんにさがしてもらったの」

その罪悪感を何とかしないと自分の体にも戻れないし、向こうにも行けないよ、って教わったから。

妄執になってしまったら、体に戻れないまま魂が同じ場所から動けなくなる、って。
一緒に事故に遭ったあの小さなタツオミ君が、俺に教えてくれたんだ。



自分は元々この年齢で向こうに帰る予定だった、ってタツオミ君は言ってた。
今回の人生が最後の人生で、自分はもう生まれ変わらないって決まってる、って。

魂にも年齢があって、何度も生まれ変わった後で全部学び終わったら、もう輪廻の輪から外れるのが摂理なんだよ、って教えられた。

だけど俺があの事故に巻き込まれたのはアクシデントで、本来の予定じゃなかったらしい。
このまま去るのは忍びない、俺のことが憐れだ、って言って。
俺が体に戻れなくなってたから、少しの間だけど自分の体を使って、って。

魂が本来の体以外に入って動けるのは21日間。
誕生日には体と魂のコードが結び直されるから、その日が来れば子供の体からは弾かれてしまうけど、それまでの間にその罪悪感を解消するんだよ、って言われた。

それで、目が覚めたら、子供の体に入ってた。



「えっと、オイラに会いたかったの?」

「うん」

「えーっと、その一緒に事故に遭った人?
が、オイラのこと知ってる人だったってこと?」

「……うん、まぁね。
ねえ、さとしくん、オレ行きたいところあるの」

「え?」

抱きついてた首元から離れて、正面から智君を見た。

俺の一番大切な人。
若くて未熟だった俺達のあの季節を、もう一度取り戻すことは出来るのだろうか。


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