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冬のニオイ

第13章 Cool

【智side】

「ブラボー!! すげぇ!!」

潤がゆっくりオイラ達に近づいて来る。
座ってたオイラの手を引いて立たせてくれるけど、まだ涙が滲むから、そのまま笑ってた。

「智っ、あなた、こんな才能があるんだね!
天才じゃん、すげぇっ」

「いったでしょっ!
さとしくんは、おどりがすごいのっ」

「おうっ、タツオミも凄かった!
智がこんなに機敏に動いてるところ、俺初めて見たよ」

「おい! それはどういう意味だよ」

潤に突っ込みながら、汗まみれの顔を手でぬぐう。
タツオミに、おいでおいで、ってやって、ポケットから取り出したハンカチで汗を拭いてやった。
首筋まで、びっしょりだ。

「タツオミ、そろそろ帰ろうか」

「え~、やだ」

「オイラ、もう疲れたよ」

ここは思い出が強すぎる。

「潤、キタムラさんに連絡するから、携帯貸してくれる?
あと、付き合わせて悪いんだけど、タツオミの家まで送ってもらえないかな」

「いいよ、じゃ、帰ろ」

ええ~っ、って不満げに口をとがらせるタツオミの両側からオイラと潤とで手を出して、まるで家族みたいに3人で手を繋いで一緒に歩いた。

「お兄さん、チカラつよい」

「そうか? ごめん、ごめん」

「さとしくんの手をにぎるときは、もっとやさしくしてね」

「わかってるよ」

何の話をしてるんだか(笑)。



二人の会話を聞きながら、今日はすっかり潤を付き合わせてしまって、休日なのに申し訳なかったなぁ、と思った。
まさか、このまま帰すわけにもいかないし、タツオミを送ったら帰りに食事でも奢った方が良いかもしれない。

ぼんやり考えて、子供の頭越しに潤の横顔を見た。

外国人みたいに整ったハンサムな顔が、何だか妙に強張って正面を見つめてる。
機嫌が悪い感じではないけど、どうしたんだろう。

そう言えば翔くんも、時々こういう顔をした。
オイラはもしかしたら気づかないうちに、何か潤を怒らせるようなことをしたのかもしれない。

自分が他人の気持ちに疎くて、配慮に欠ける人間だってことは良く知ってる。
考えてみれば、昨日、付き合うって話を断ったばかりなのに、潤の優しさにすっかり甘えてしまってた。

悪いことしたなぁ、って思いながら、コートの襟を合わせた。

冬の陽は沈むのが早くて、風が急に冷たく感じられた。


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