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冬のニオイ

第15章 Carry on

【智side】

翔くんと二人になって、満たされるってどういうことか初めてわかったんだ。
一人ぼっちでいるのは本当は淋しいことだったんだな、って、翔くんが教えてくれた。
二人になってからまた一人になるなんて、思ってなかった。

「しょおくん……。
オイラ、ずっと一人で待ってたんだよ……。
遅いから、もう来ないのかと思った……」

嬉しくて目を閉じたまま呼びかける。
ぎゅっ、てしてくれて、額にキスされる感触があった。
背中をゆっくり手が擦ってる。

翔くん、オイラのこと嫌いになったんじゃないの?

『違うよ……』

ほんと?
なら、良かった。

温もりに安心して震えがおさまってくる。

「起きてもいる?」

訊いたら、また胸にぎゅっ、って抱いてくれた。



やがて寒くて苦しいのが楽になって、眠ってしまってたんだろう。
時々気がついて、ぼんやりと目を開けるたびに潤が見えた。

目が合うといつも安心させるように笑ってくれて、オイラの額に触れる。

「じゅん、ごめんね……」

「大丈夫だから、気にしないで眠ってて。
汗かいてるから着替えようか。
ちょっと、ごめんね」

されるがままに着替えさせてもらって。
水を飲ませてもらったり。
トイレに行かせてもらったり。

大丈夫、大丈夫、って、何度も声をかけてくれて。
申し訳なくて、ごめんねってしか言えない。

オイラが謝ると、潤は辛そうな顔をする。
そんな顔をさせてごめん、ってまた思う。

「眠って。起きたら楽になってるよ。ね?」

ね? って、いつも優しくて。
何度目かわからないけど、また目を閉じる。

手を握っててくれてるから大丈夫。
オイラは一人ぼっちじゃない。
大丈夫……。



神様、翔くんを助けてください。
オイラの命あげていいから、翔くんを助けて。

遠くで誰かが泣いてる声がする。
嗚咽をこらえるみたいに、不規則な息遣いがしてる。

泣いてるのは誰?

「泣かないで……」

言ってみたけど、返事は聞こえなかった。


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