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刑事とJK

第9章 看病

ぎゃーぎゃーとこんな言い合いを、かれこれ30分はし続けた


お互い喉がかすれてきた


「お前なぁ…こっちは病み上がりなんだぞ?」


『そんだけ元気なら問題ないね、でも残念、寝込んでるときはあんなにかわいい顔してたのに~』


「なっ、人の寝顔勝手に見てんじゃねぇよ!!
やっぱりお前のほうが変態じゃんかよ」


『何を~!!』





その時、ゆうひの動きがピタッと止まった




「…何?」



『…背中のシップ、貼りなおそ』



さっきまでのテンションと180゜違ったので、斉藤は少し戸惑ったが
この好意には甘えることにした


ゆうひは斉藤の後ろにまわり、ゆっくりテープを剥がしていった


「急に…どうした?」


斉藤はそわそわしている


『この傷見てたら…全部思い出しちゃって…』



斉藤が殴られたこと


あたしが斉藤を追いかけたこと

斉藤が小犬のために一生懸命お墓を作ってくれたこと


学校が終わって、いつも通り公園に行ったら…

小犬が…死んでいたこと…





『……』





「…泣いてんのか?」




『ごめん…あたし、も、泣きたく…ないのに…』


ゆうひは斉藤の背中に寄り掛かって泣いた




斉藤は向き直ってゆうひの手を握る


「何が…つらい?」




『小犬が、いなくなって…あたし、何のために生きてるのか、わかんないよぉ…』


ギュッとゆうひは握り返す


斉藤には、ゆうひにとって小犬の存在がどうしてそこまで大きかったのかはわからない


けど、これだけ言った



「それなら、オレがお前を必要としてやるよ」


ゆうひは斉藤の目を見た


それはとてもまっすぐな目だった


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