
おはな畑
第3章 Diamonds
「あれ、五条先生まだいたの? も〜、早く帰って休まないとまた倒れるよ! って、なぁにそれ?」
あの日、藤堂先生に渡されたまま。
血や汚れが固まってこびりついたブレスレットを見つめていると、回診から戻った神崎先生に声をかけられる。
「これ、ひなに誕生日プレゼントであげたブレスレットです。事故の時に落ちてたって、藤堂先生が拾ってくれて」
「あぁ! そっか。ひなちゃん、あの日も大事に付けてたんだね。それにしても、藤堂先生よく見つけたな〜。さすが」
「はい。ダイヤモンドが潰れないってよく聞きますけど、あれは本当でした。ご覧の通りボロボロですが、ダイヤの石に傷はないんです」
「本当だ。汚れてはいるけど、磨いてもらえば元通り綺麗になりそうだね」
「そうなんです。だから、店に頼んで作り直してもらおうかなって考えてて。ダイヤはこのままで、チェーンだけ替えてもらおうかなと」
20歳の誕生日。
大人になった記念に贈った大切なプレゼントを、このままダメにはしたくない。
それは、ひなにとっても同じはず。
だから、もう一度綺麗にしてもらって、ひなに贈ろうと思った。
