三匹の悪魔と従者たち
第8章 持たざる者
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ジンの所から戻って間もなく、ユーゴは自室の入り口の広間から続くテラスで、アイシャと午後の時間を過ごしていた。
時おりスレイがやってきて「お茶のお代わりなどはいかがです」などと聞いてきた。
今日の彼女は楽し気に妹のことを話していて、その間中柔らかそうにゆるくウエーブがかかった髪が肩で揺れていた。
「気になっていたんだけど、まだ次の仕事しなくて家の方は大丈夫なの?」
そんな風にまた再び午後に城へ来るようになったアイシャだったが、ユーゴは彼女の生活が気にかかっていた。
従者の頃と違い、彼はアイシャが訪問すると自分の仕事の手を止めてテーブルなり、テラスなりで彼女と向き合うようになった。
もう従者ではないのだから、当たり前といえば当たり前なのだが、ユーゴとしては今まで素っ気なくしていた謝罪と、単純に嬉しいという気持ちがあるからだった。
「今日はこれから面接なの。 そうそう。 先日、ここから割と退職金いただいのよ………でも、わたくしなにもしていなかったのに、そんなの受け取ってもいいのかしら?」
彼女が困っているようなら力になろうと思っていた。
それもなかなか切り出せなかったユーゴだったが、遠慮がちにそう訊いてきた彼女に対し、ある感情が湧いてきたのでふと昼のことを思い付いて「愛してるよ」そう言ってみた。
「なにもしてないなんてない。 少なくとも僕はそう思ってる」
目をぱちぱちとしばたたかせて彼を見てきたアイシャだったが、それからなぜだかユーゴの口からはスラスラと言葉が出てきた。
「それに、金額やなんかは僕が決めることじゃない。 父さんにきちんと話してからにはなるけど、アイシャは実質的には僕の婚約者なんだから、こっちに来てもいいんだよ。 実家の方も縁が出来るわけだから、援助するのは当たり前だし」
「そうなの? だけどそんなの」
「僕はアイシャに毎日会いたいし、もっと話をしたい。 自分がこんな身分なのはこちらの勝手だから、僕の我儘かもしれない。 迷惑かな?」