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三匹の悪魔と従者たち

第8章 持たざる者



表面的にはユーゴはなるべく今までどおりにしていたが、そもそもそれもおかしな話だ。関係性が変わったのだから。 そんなことに彼が今さら気付き、テーブルの端に乗っていたアイシャの手に自分のそれを重ねた。


「そんな……気持ちだけでもとっても嬉しいわ? あの、こないだ。 わたくしが逃げちゃって……あれからなんとなく気まずそうだったから、もしかしてユーゴに呆れられたのかもって、思っていたのよ」


彼の親指におずおずと自分の人差し指を乗せてきたアイシャだった。
そんな気持ちにさせてしまっていたのに、こうして訪ねて来てくれていた、そのことを彼女に感謝した。


「それもごめんね。 その件は、僕はアイシャにずっと謝りたくって。 待つって言ったのに、ズルいことしたって後悔してた。 嫌われても仕方ないなって」

「貴方を嫌うなんてないわ!! 鈍感でも優柔不断でも腹黒くって変態でいやらしくても、わたくしはどうしたって、ユーゴが好きなのよ!」


口調の勢いに任せユーゴの手をぎゅっと握って、アイシャが力説してくる。


「僕が言うのもおかしいけど、アイシャって趣味が悪いよね………」

「そうかしら?」


「僕だったらそんな男やだよ」心から嫌悪をあらわにしたユーゴに「あら、分かってないのね?」と言いながら、アイシャが手を握ったままユーゴの隣に座った。


横並びになってお互いの肩が触れ、どちらともなくくすっと笑みがこぼれた。


「そんなきみを僕は愛してるよ。 もう無理強いはしないし、アイシャのペースでいいよ。 約束する。 でも、今日は抱き締めてもいい?」


彼女に触れようとして、なにか言いたげにユーゴを見詰めてきたので、目で問いかけるとアイシャがぽっと顔を赤らめた。


「………なんだったら、キスしてもいいわよ?」

「したいの?」




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