三匹の悪魔と従者たち
第9章 地上の月
「─────お前。 その股の間の粗末なモノを一生使えなくしてやろうか」
「…いてっ、いでてッ! ご、ゴメンなさい!!」
気付いた時にはオレは腕を背中に回されてもがいていた。
声を掛けながら彼女に近寄って、腰に手を回そうとしただけだ。
女の、捻りあげる力が思ったよりも強く、とうとう膝をついたがそれでもギリギリと関節を締めあげられるので額から脂汗が吹き出た。
バルコニーの出入口から、さっき彼女と話していた大男が姿をあらわし、可笑しそうに肩を揺らしてオレの方に近付いてきた。
「くくっ……おいゾフィー、その辺にしとけ。 今晩の俺たちは一応客人だぜ」
「どちらだろうと、無作法を許していい理由にはならん」
抑揚のない声で言い、やっと女はオレの腕から手を離した。
魔族の男が「大丈夫か」と聞いてきたが妙な凄みのある彼の目つきは全く笑っていなかった───────オレは猛ダッシュでその場から退散した。
あのサタンをみて油断したが、平和主義なドワーフと違いやはり魔族は恐ろしい。
あまり彼らを刺激しないことだ。
そう結論づけて、オレは族長の元に逃げ戻った。