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三匹の悪魔と従者たち

第9章 地上の月


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「醜態を見せたな。 里ではあんなのは、日常茶飯事だ」


バルコニーの柵の上に座り、苦々しげに語るゾフィーだった。


「女は男には逆らえない。 例え無理矢理であろうとも。 結婚の相手を選ぶのも男だ。 魔族のように旺盛ではないにしろ、ここで性犯罪というものが存在しないのは、それが当たり前と認識されているからに過ぎない」


ゴウキは、それについてはなにも言わなかった。

それでもそれが文化である。 外からやって来たものが弾ずる資格はない。 基本的にはそう思っている。
ただ、さっきみたいな男があんなへなちょこではなく、ゾフィーが本当に危機に晒されているのなら、それは別問題にはなるが。

その点で、彼女は過去になにか嫌な思いをしたのだとは思う。 最初にゴウキが彼女を抱いた時、初めてではなかったにも関わらずゾフィーは不自然なほどに緊張していた。
奥手だったのもそのせいなのかもしれない。



「今後お前はそんな目に会うことはない。 俺もさせない」


せいぜいそう言ってやるぐらいしか出来ない。 そしてそんなことを口に出してはみたが、結局自分とゾフィーの従者制度。 それも大してドワーフのそれと変わりはないことにゴウキは気付いた。


(きっとユーゴのあんな話を聞いちまったからだ)


見た目なんかなりふり構わず、物にすりゃいいじゃねえか。 昼間そんな風に、軽く弟を元気付けてやろうとしたのだが、出来なかった。

男らしくない。 最近ゴウキが自分のことをそう思っているのと同じ言葉を、つい彼に向けて口走ってしまった。



「お前は優しい男だ」


そう言って彼を見る、ゾフィーのこともまともに見れやしない。


視線を逸らすついでに、ゴウキは高台のここから眼下を眺めた。



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