三匹の悪魔と従者たち
第10章 再び王の間へ
とんとん、と椅子の肘掛けを指で叩きながらサタンは考え込んだ。
「しかし、然るべき結婚相手もだな」
困ったように腕を組み始めたサタンに、ジンがゴウキの上腕の辺りを肘でつついた。
「ゴウキ。 言っちゃいなよ」
「は……なっ? なんのことだ」
狼狽えた様子でしらを切ろうとするも、ジンには彼の動向はバレバレなのである。
組んだ腕をそのままに、サタンがゴウキに探るような視線を送った。
「ゴウキ。 お前の気持ちはどうなんだ? 結婚のことも当てはないのか」
そう問われて、彼は一瞬空に目を彷徨わせる。
『お前が王になるべきだと思う』生涯を共にしたいと思っている彼女。 ゾフィーが彼に対し、望んでいたカードを一枚、多分自分は手にしたのだろう。
結果のことは脇に置いて、彼は毅然と口にした。
「弟たちが言うのなら構わない。 ……ただし、俺の相手は決まってる。 ってワケで今、俺はこんなことをしている場合じゃねぇんだよホントはな」
単純に、これを利用しない手はない。
欲しいものはいつだって一つだけなのだから。 とっとと立ち上がったゴウキを見上げてユーゴが言った。
「兄さん、ゾフィーさんを迎えに行くの?」
ユーゴのこれは、なんとなくの勘であった。
元が分かりやすいゴウキなのだ。
「ゾフィー? あのゾフィーか」
「ああ。 一週間で戻りゃいいんだろ? 親父、俺の相手はアイツだよ。 無理ならそう言ってくれ。 今すぐにだ」
驚いた表情で身を乗り出した王だったが、出自や身分。 そんなものが頭にチラつく前に、まるで息子に牽制されたようだった。
「………む」
それきり口をつぐんだ父親に踵を返して出口へと向かう。
「幸運を祈るよ。 兄上」
「兄さん頑張ってね!」
そんな弟たちの言葉を背に受けて、ゴウキはそれから振り向きもせずに城をあとにしたのだった。