三匹の悪魔と従者たち
第4章 ゴウキ × ゾフィー
「冗談だ」
「……っだ、だよな!」
ほっとした表情で足元に転がったそれらを拾い上げる彼女を見ていると、いややはり自分は嫌われているのかもしれないと不安になった。
「いいからこっちに来いよ」
屈んでいたゾフィーの手元がびくっと止まった。
「それは……命令なのか」
珍しくゴウキの口調が強くなってしまったせいか。 この類いのことに関しては元々余り積極的ではないゾフィーだが、そう彼女に訊かれたのは彼は初めてだった。
言葉に詰まるゴウキを見て、彼女がバツの悪そうな表情で小さく言った。
「………悪い」
ゴウキは命令ではないと言いたかった。
「嫌ならいい。 構わない」
ただ他に上手い言葉が見つからず、あくまでもゾフィーを尊重しているという言い方に留めた。
「………私が嫌ならしないのか?」
「? 妙なことを聞くな。 当たり前だろ」
いくらか悩ましげに目を泳がせ、ゾフィーがおずおずとゴウキの前に進み出る。
「じゃ、せめて────バスルームとか暗い所で……わあっ!」
「暗い所、ね。 了解」
彼女の両脇を持ち上げて、ゴウキが軽々と自分の肩にゾフィーを乗せた。
「おい、何する下ろせ。 バスルームは向こう……って、聞けお前!!」
こんな時に顔を爪で引っ掻くなんて可愛らしい抵抗はせず、容赦なく肘でエルボーを決めてくるゾフィーもまたいい。
そのダメージを最小限に受け流しながら、ゴウキはうきうきと城外のデートに繰り出したのであった。