三匹の悪魔と従者たち
第5章 ユーゴ × アイシャ
「ねーえ、ユーゴ。 今なんの仕事してるの?」
めげないアイシャがデスクに手をついて、構って欲しげに話しかけるが、清々しく彼はそれをスルーしようとした。
「言っても分かんないと思うよ」
「ユーゴってば勉強し過ぎてむしろ馬鹿になっちゃったの? 言われなくちゃ分かりっこないわ」
アイシャの癖にたまには正論をいうものだ。 ユーゴはしぶしぶ口を開いた。
「………今はジン兄さんの手伝いだよ。 LEDの色温度や、ケルビンで育つ植物や野菜のデータの集計をしてる」
「色に温度なんてあるの?」
「そうだね」
「ふうん? そしたらユーゴの髪みたいに真っ黒なのはどうなの?」
「一般的に、暗色に近くなるほど温度は低くなるね」
「じゃあ、わたくしはあったかい?」
質問に答えかけようとしてユーゴが言葉に詰まるが、そもそもそんな価値のない内容である。
とうとう手を止めたユーゴは呆れがちに、やっとアイシャと視線を合わせた。
「アイシャ………いい加減、僕に仕事させてくれないかな? 別に喋りっぱなしじゃなくても、うちから給料は出るんでしょ?」
「そ、っ……だけど。 仕事仕事って、体に悪くなくって? たまには運動して息抜きするとか」
「ゴウキ兄さんほどじゃないけど、適当に動かしてるよ」
「年頃の殿方なんだから、もっとこう、発散したいとか、あるのじゃないかしら?」
「ないよ」
浅く息をついたあとに首を左右に振ってほぐし、また画面に目を戻そうとしたユーゴが、廊下から内側に開かれた戸口に目を向けた。
「アイシャはお役目のことを言ってるのですよ。 ユーゴ様」