三匹の悪魔と従者たち
第5章 ユーゴ × アイシャ
「さっきからカンカン鳴ってるのは求婚者のメールかなにかですか?」
面倒ごとといえばもう一つ。
先ほどスレイが言っていた例の花嫁探しだった。
自分には物静かで知的なエルフか大人しい人間あたりが合うのかななどとユーゴが考え、その世界の要人に声を掛けてみたものの、今朝方からドカドカとメールが来て、受信箱を開く気にもならなくなった。
「そう。 地位もあるし確かにこの歳にしては年収も悪くないからなんだろうけど」
ユーゴとしてはこの、好きなことを仕事にしてひたすら打ち込める今の生活が気に入っていた。
もっとこの世界が便利になって農作物や観光業なども発展させたら、アイシャみたいに苦労している真面目な平民も減るだろう。
城下の繁華街にはスラムみたいに、もっと貧困に喘いでいる人々も沢山いると聞く。
そのためには権力があるのは色々便利なのかもしれない。
そういう意味では王もやぶさかではないものの。
「なあに? お見合いするの?」
「アイシャ。 上から他人のPC覗かないでくれる?」
いつの間にユーゴの自室に戻ってきた彼女が、ずらりと画面に並んだ女性たちの顔写真やプロフィールを覗き込んでいた。
小言を口にした彼に画面を変えられて、むっつり頬を膨らませたアイシャがあからさまに面白くなさそうに言う。
「だってユーゴなのに結婚だなんて。 ちっちゃいウインナーみたいなくせに。 女の子も知らないくせに」