三匹の悪魔と従者たち
第5章 ユーゴ × アイシャ
昨晩のこと──────────
『悪魔族の男性ってうんと強いって本当?』
『なにが?』
上品そうだという先入観で、思い至らなかった。
魔界の城下で見合い相手と夕食を取っていたレストランのテーブルの上で、食後のコーヒーを飲みながら相手が話しかけてきて、そっと彼の指を絡ませられてユーゴはやっと察した。
『私の種族にはない、魅力的な色だわ。 そんな色彩だと魔力も強いって聞くし。 どんなのか見せて?』
父親譲りの自分の真っ黒な目とか、そんなことだろう。
確かに色彩と魔力は大いに関係している。
魔力とは本来、元々の力を増幅させるような役目を果たすものであった。
今はその影も薄いが、あのサタンが大王になった所以である。
全体的に色素の薄いジンはそれ程でもないが、丁度ジンとユーゴの中間的なその力を持つ、ゴウキの屈強さは彼自身の魔力にもよるものだ。
とはいえ、全く器のない所にはそれは余り役に立たない。
ユーゴの場合はそれが知力に集中しているが、あとは元々やや平均より上の諸々が、他人よりも優れている。
総合力やバランスといった意味では、三兄弟の中ではユーゴは一番上の資質を持っていた。
自分の色の意味やそんなことを他種族に話しても詮無いので、ユーゴはあてもなくテーブルの上に目を彷徨わせた。
そこで手っ取り早くスプーンからデザートのムースを少しすくって、そっと彼女の口に運んであげた。
『わあ……どうやってるの!? 手も使ってないのに』
分かりやすいでしょ? そう言いたげにユーゴが肩を竦めて、ムースを咀嚼している彼女が口元に手をあてる。