三匹の悪魔と従者たち
第5章 ユーゴ × アイシャ
魅力的な唇だと思っていたので、彼はそんな彼女の仕草を惜しく思った。
普通に女性に誘われて、こんなデートの延長みたいな見合いの、婚前交渉のその前の段階だといってもユーゴに断る理由はない。
家の許しを得て久しぶりに城下に出れたのだし。
繁華街をきょろきょろと見渡し、昔は魔族ばかりでどこかすさんだ雰囲気だったこの街も、今は明るい街灯の下で色んな種族が夜遊びを楽しんでいる様子だった。
『そんな理由でしたら、王より今晩は門限を0時にするとの許可が出ました』
『どこのシンデレラなの……』
スレイへの連絡を終え、その直後にわざわざご丁寧にそういう手合いのホテルまで予約しておいてくれたという彼は優秀な側近だとユーゴはつくづく思う。
一方、いっそどこも満室だったら良かったとも。
アイシャに言ったとおり、別にこんなことが初めてなわけではない。
高嶺の花過ぎるジンや黙っていれば威圧感のある印象のゴウキと比べ、ユーゴは女性からするといくらか取っつきやすい。
誘われていちいち狼狽えないほどには旺盛でもある。
しかし彼は気乗りがしなかった。
そしてそういう時のユーゴの悪い予感は当たる────────