三匹の悪魔と従者たち
第5章 ユーゴ × アイシャ
体調でも悪いの? そう尋ねる間もなくスレイが引き下がり、すたすたとその場を去っていく。
いつかのように再びその場に取り残されたユーゴはしばらく呆然とし、これもまた珍しくデスクを拳で殴りつけた。
その上に載っていた書類やファイルやらがバサバサ床に落ち、それでも苛立たし気に悪態をつく。
「一体なんなの? どいつもこいつも」
じんじんと痛む手に気付き、それを力任せに握り込むと、いくらか感情が落ち着いてきた。
それから落ち着いて物事を整理しようと試みて、ユーゴが深呼吸をしてから椅子に深く掛け直す。
アイシャが選んだ。
それはいい。 良くはないが、もしも彼女がそうしたいのなら。
こないだの喧嘩みたいなのが原因ならば、察するに自分はどうやら嫌われてしまったようだ。
「一方僕の方はというと」
それでも彼女は自分にとっては、大事な幼なじみには変わりがない。
このままアイシャが不幸になるのを黙って見ていろというのか。
普通に、籍だけここに置いておけばいい話じゃないか。
給料だって決して悪くない。
自分の従者ってだけで彼女にとってマイナスなんてあるのか?
好きな奴でも出来たとか……いや、そんな素振りはなかったはずだ。