三匹の悪魔と従者たち
第5章 ユーゴ × アイシャ
「──────わっ!!」
「きゃあっ!?」
お互いにぶつかりそうな勢いで、開いたドアの入り口で鉢合わせたユーゴとアイシャだった。
「ア、アイシャ!? なんでここに」
「い、一応は長年お世話になったわけだから。 一言もなしってのは礼儀知らずでしょう? ご挨拶ぐらいはしておくべきって思って」
決まりが悪そうにそっぽを向いている、一応は元気そうな様子の彼女を見てユーゴはほっとした。
「………辞めるって? 辞めてどうするの?」
「なんとでもなるわよ。 住み込みでどこかに雇ってもらうとか」
「そう。 変なこと考えてなくて取り敢えず良かったよ」
あの両親にそそのかされて身売りとか。
そんなことになったら、今までの自分の苦労も水の泡………そう思いかけ、ん? 苦労? とユーゴが首を傾げた。
「変なことってなあに?」
同じく斜めに首を傾けてアイシャが彼を見る。
「こっちの話だけど……」
ふうん? 不思議そうに相槌を打つアイシャ。 その間、ユーゴは口をすぼめて息を吐いた後に小さく愚痴る彼女の唇をじっと見ていた。
「ああ。 手っ取り早く、どこかのお金待ちの家にでもお嫁に行ければいいのだけれど」
「じゃ、僕のとこにくれば?」
「……………」
「……………」
「ん?」
「え?」
「なに?」
「え、なにそれ?」
「ま、待ってユーゴ」
「いやアイシャ。 こっちも待って」
狼狽える二人だったが、先にユーゴの口角が可笑しそうにあがった。
「…………本気なの? まさかとは思うけど」
「まさかと思うよね。 あーでも、なんでもいいや」
手のひらを顔に当て、やけになっているのかよく分からない様子のユーゴと、ぽかんと目と口を開きっぱなしのアイシャである。