三匹の悪魔と従者たち
第5章 ユーゴ × アイシャ
「なんでもって」
「僕はアイシャが大事で、それなら結婚は大事な人がいい。 仕事だからってのっぺらぼうとは結婚出来ないし」
「最後の方、よく分からないのだけど」
「だろうね」
本人を久しぶりに目の前にしたユーゴはようやく気付いたが、こないだ見合いした女性。
あの人の口元と、亜麻色が混ざった金の髪。
それがアイシャと似ていたのだった。
自分の間抜けさに歯噛みをしたくなる気分で、けれどまずは、これまでの自分たちの関係を早急に見直す必要があるとユーゴは思った。
「でも、ユーゴはわたくしを抱こうとしなっ……んっ?」
それでほんの軽くアイシャに口付けをしたわけだが、触れた瞬間に彼女が自分の視界から消えた。
「………腰抜かさないでよキスぐらいで」
膝から床に崩れ落ちるアイシャの手を慌てて掴むも、そのままへなへなとへたりこんでしまった。
彼女が顔が赤いのを通り越していっそ青ざめながらユーゴを見上げている。
そこでユーゴが同様にしゃがんでアイシャの体に腕を回し、再び彼女に顔を寄せてキスをしようとした。
「僕はそもそも、従者だからってこんなことするのは頭に無かったから。 でも、もう辞めたからいいね」
「えっ…待ってちょっと待って待ってユーゴ待って!!!」
そしてこんな時までアイシャは騒がしい。
「いいよ。 どれぐらい?」
そういう彼女の様子もなぜか懐かしいというか、嬉しいというか。 余り刺激しないように背中に回していた手を緩めたが、今度は徐々に桜色に染まっていくアイシャに、困ったように視線を逸らされる。
「わ…わかんないわ」