三匹の悪魔と従者たち
第5章 ユーゴ × アイシャ
ただ彼女をこないだの女性みたいに扱いたくはなかったので、そのまま抱き上げたアイシャを自室の奥へ連れていった。
ユーゴは普段はすぐ入口の広間を仕事場として使っているのだが、その部屋は本棚とデスクだけが並んでいる殺風景な書斎だった。
板の間に引かれている絨毯の上にそっとアイシャを下ろし、彼女の両手首が揃えられたかと思うと、そこにしゅるる、と生きもののようにその身を捻りながらやってきた長紐が巻き付いてきた。
「へっ、ユーゴ? これなに?」
「柔らかい素材だから痛まないでしょ?」
括られた自分の手首とユーゴを交互に見つつ、アイシャが戸惑ったように、にこにこと笑顔の彼を見上げている。
「でもあの。 これじゃ身動きが取れな」
「脱がす気も無いし見ないから。 ただこれをしてるのは僕だって忘れないでね。 アイシャ」
アイシャの額の上に軽く口をつけたあと、ユーゴはくるりと踵を返した。
「あら? どこ行くの? ユーゴ」
「お茶の時間に戻るよ。 じゃあね」
そしてぱたんと扉が閉じられて、なぜかご丁寧に外鍵までかけられて、そのまま書斎に取り残されたアイシャだった。