三匹の悪魔と従者たち
第5章 ユーゴ × アイシャ
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「………いや…って言ってる…でしょう…っ」
ぜいぜいと疲労の吐息を洩らし、アイシャが体を捻って自分に触れてくる物体を避ける。
これがユーゴの仕業だと分かっていた。
子供の時は蛇を模したロープを服に入れられたり、遠くからパンツの中にスライムみたいな低級魔を入れられたりと結構なことをされた覚えがある。
ユーゴは今は澄ましていても、倒錯した悪ガキだったことをアイシャは思い出した。
それでも髪と瞳の色を除けば、天使のような外見でもの柔らかな彼に一目惚れした幼い頃のアイシャだった。
「わたくしったら、油断していたわ……」
それなら自分に大した危害を加えないことも分かっている。
ただなんというか、ふわふわと空中に浮く羽根やら紙切れや布片で、耳や首や手足、衣服の上からでも背中や腕や腿、そこら中をまさぐられるのはなんとも言えない不気味さがある。
彼の魔力も昔よりパワーアップしているようだし。
最初は驚いて叫んだものの、ユーゴが戻ってきてくれないのを察するとアイシャはそれを徒労と断じて諦めた。
「今さら、こんな……イタズラなんて…ひゃ!? やめて…くすぐっ……きゃははははっ!」
脇腹の辺りを鉛筆の背がつんつんとつついてきて、思わず笑ってしまうが当然アイシャは楽しいわけではない。
「ふー……一人っきりでケタケタ笑ってたら、ただの変態だわ。 ユーゴみたいになっちゃう」
そんな嫌味を言ってみるも、やはり彼が来てくれる気配はない。
さっきからぺたぺたと頬を撫でてくる羽根ペンなどは感触が柔らかいため、アイシャはこれとは仲良く出来そうだと思った。