三匹の悪魔と従者たち
第5章 ユーゴ × アイシャ
「うーん。 羽根さん。 わたくし、なんでこんな目にあってるのかしらね?」
アイシャがころんと床に横になり、ここ最近の出来事を反芻しようとする。
するとこれ幸いと色んなものが色んな所を触ってきたが、口なんか聞いてやるものかとばかりに彼女はまとめて無視を決め込んだ。
「そう、十日ほど前。 そもそもあれは、ユーゴが悪いのだわ。 わたくしというものがありながら、他の女性と仲良くしていただなんて」
それでユーゴは自分のことなど全く眼中に無かったのだと、アイシャは嫌というほど分かったのだ。
「健気なわたくしは積年の想いを捨て去ることにしたのよね。 でも彼の顔を見たらまた気が変わるかもって、それが怖くて電話だけしたのに、スレイさんが挨拶には来るべきです、なんて」
そうはいっても彼女としても、スレイを含めた長年通った城の皆にお礼は言っておきたかった。
「そしたらいきなりプロポーズとか……きゃっ!」
うなじの辺りを布片が通過し、アイシャが思わず体を竦ませた。
「キス、とか」
思い出せば赤面ものだった。
しかもユーゴの方から。
従者の時は、絶対その内自分が寝込みを襲うのだと決めて隙を伺っていたのに。