三匹の悪魔と従者たち
第6章 美味しい食事
正直、一人きりで考えごとをしたいってのもあったんだけど。 ユーゴは一瞬そう思ったが、長男の気遣いを無下には出来ない。
それに魔力を使い過ぎると、それがまた魔物を呼んでキリがない。
彼はとっとと仕事を済ませてアイシャが訪ねてくるお茶の時間には城に戻りたかった。
「ありがとう兄さん。 じゃあ、お願いするね」
にこりとゴウキに微笑みかけるユーゴにつられ、食卓の雰囲気もふんわりとした空気に包まれる。
仲の良い家族と有能で働き者の息子たち。
今朝もそんな王子の面々を見渡し、うんうんと満足げに頷いたサタンはナプキンで口元を拭ったあとで玉座からぴょんと跳ね降りた。
「では今日も悪に染まった一日であることを願うぞ。 銘々の嫁探しまであと二週間、これも怠らないように」
どこを見回しても悪事の欠片もないのだが、サタンのこれは一本締め的な朝の習慣の言葉である。
食卓をあとに執務へ向かって行くその小さな背中を眺めながら、三人の王子が同時にため息をついた。
それぞれがそれに気付いて目を逸らす。
「まあ………だよな」
「そうだね」
「ホントにね……」
後継者の王に相応しい『花嫁探し』 。
それが難航しているのは三人とも見た目に明らかだった。
そして三人はここのところ、こうも思い始めていた。
面倒見がよく腕の立つゴウキ。
社交に長け忍耐強いジン。
知力魔力に秀でるユーゴ。
この中の一人が欠けても、現在急速な発展を続けている魔界の運営はつまづいてしまうだろうと。
『誰か一人が王になる』
そんな必要は果たしてあるのか──────と