三匹の悪魔と従者たち
第7章 城外の朝
寝室のドアに向かって外から「ユーゴ様。 ユーゴ様」いくらか強めのノックを繰り返すスレイに邪魔をされた。
「ゆ、ユーゴ。 スレイだわ? ねえ」
この手のことに慣れないアイシャは落ち着かない様子で、実は生唾が出そうなほどそそられる代物だった胸にユーゴが触れる前に、シーツで体を覆い隠してしまった。
ズボンの中で窮屈そうにガン勃ちしていた自身を無理矢理治めて何事かとスレイに訊くと、
「こちらはアイシャのお召し物ですか? 乾かしておきましたけど」などと無神経なことを言ってくる。
それで火でも吹きそうな勢いにアイシャの顔色が変わり、速攻で家に帰ってしまった。
「あああ明日、また来るわ!!!」 間抜けな結末にもかかわらず、彼女がそう言ってくれたのがまだ救いだった。
「どういうつもり? アイシャや僕の気持ちは知ってたんでしょ?」
今までの彼の言動からしてそうだと思った。
なのになんで邪魔をするのか。 そう非難したユーゴにスレイは「知っていたからこそです」そう答えた。
「魔力を使いましたね? 書斎の道具に跡が残っていました。 ああいう……特に女性に対しての悪戯は、随分昔に禁止したはずですよ。 乙女であるアイシャがそんな手口でユーゴ様と結ばれて、たとえ将来お二人が一緒になろうとも、彼女の生涯一度きりのその思い出が、ユーゴ様の魔力によるものと、彼女に思われても良いのですか。 そこにユーゴ様の真心はあるのですか」
真剣な様子で諭してくるスレイに対し、ユーゴは二の句が告げなかった。
でも僕はその時のアイシャを見る気は無かったし。 などと、そんな言い訳とは別次元の話だった。