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三匹の悪魔と従者たち

第7章 城外の朝



人間界では車の運転が上手い人は女性の扱いも上手と聞いたことがある。
それはもしかしてこの馬が由来なのではないだろうか。 ユーゴはそんなことを思いながら、ここと城下とを隔てる高い防壁が見えてきた辺りで脚を止めた。



「──────ふう。 ありがとう。 こんなに早く着けるなんて感謝だよ」


馬の長い首の当たりを撫でて、優しく声を掛け一時間ほどここで待っていてくれる? と断り二頭のそれらから離れてゴウキと並んで歩いた。


「で、さっきの話だけどよ」

「ごめん。 少しだけ結界を厚くしとくね」


本来は元々の力を増幅させる───────それとはまた少し別の、物を動かしたり結界を張ったりという魔力の使い方は基本的に、思い描くイメージを対象に集中するだけだ。
自分の能力に見合ったその結果の形を正しく明確に作れることが重要で、主にスレイから学んだ教育はそれだった。
知識を増やすこと、対象を推し量ること。そんなものも訓練になる。

故に、能力値と経験値を掛けたものが最終的に、力を使うものの魔力の強さとなる。


一瞬軽く二人の体に重力が乗り、辺りが濃い灰色に包まれたと思うと薄霧のようにそれが消えた。

自分以外の有機物も含めて、広い対象に強固な結界を張れる。 こんな芸当が出来るのはサタンやスレイ、『黒の女』などとと呼ばれる希少な存在を含めた、ひと握りの魔族に限る。
久しぶりにそれを目にし、自分の周りから邪気が消えたのを肌で感じ取ったゴウキが口笛を吹いた。

疎らに聴こえていた魔物の声も遠くになり、まるで外界から切り離された空間が出来たようなその中で、落ち着いた様子の二人が、岩場の上に腰を掛ける。


「サンキュ。 話を戻すが、こないだゾフィーとも話していた。 ここが無くなっても危ないことには変わりはない。 むしろ繁華街に魔物が入り込む危険性もあるだろ?」

「なにも考えてないわけじゃないよ。 ただ、ここの地質。 農作物を植えるにしろ区画整理するにしろ、調べていくうちにいくつか特有の、有害な成分が含まれてることが分かったんだ。 それもこの、南の辺りや魔の森らへんに多くね。 時間をかけて浄化していけば、魔物も減っていくはずだよ。 そうしたら壁を取り払えばいい」



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