三匹の悪魔と従者たち
第8章 持たざる者
「─────僕はアイシャと、結婚したいんだ」
そんな風に切り出して、アイシャが従者でなくなった経緯や、彼女との事の顛末をぽつりぽつりと話し始めたユーゴだったが、初めは驚いた表情をしていたゴウキたちの顔が、段々と微妙なものに変わっていった。
「っつかな」
「なんともね」
「だよね。 自分でも情けないけど……結局、僕がこうなのは、ジン兄さんなんかと違って色々上手く出来ないからだとか、いっそ彼女にとって相応しくないのかなとか考えちゃって」
「こういうの、ゴウキは苦手そうだよね」
話を振られたゴウキが苦々しそうに顔をしかめてがりがりと頭を搔いた。
「んーあー……まあ、そうだな。 スレイの言うとおり、なんつうか。 男らしくはねぇわな」
そう言ったあとで不味かったと思ったのか、無言で俯いた弟に目を留めて、しまったとばかりに口を閉じた。
「えー、ああ」しどろもどろになりながら「でも、それがさ。 お前の良いとこなワケだし!」そんな言葉を口走りながら壁伝いに戸口へと擦り寄って行く。
「良いとこって、どこが………?」
「そうやって考え過ぎるとこ?」
相変わらず俯いたままのユーゴが小さく「それのなにがいいの?」と訊き返し、言葉に詰まったゴウキは仕舞いにあとは頼むと言いたげな視線をジンに送った。
「あっ俺。 これから晩餐会の準備だスマン!」
そして一言残して、逃げるようにその室をあとにした。