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小さな花

第2章 Not a boyfriend


スーツを着ているんだけれど、でもなんとなく…サラリーマンではない。


それにいつもこんな時間に来るのに、お風呂に入ったばかりのような清潔感をまとっている。


「カズヤくんってどんなお仕事してるんですか?」

「あ。気になる?」

「う、うん…」

第一声で”会社員だよ”とか言わないあたり、すでに怪しい気がしてしまう。



「んじゃ、今度ゆっくりお茶でもしよう!ね!」


お茶でもしよう、というセリフに、思わず笑った。


「なんだか古風な誘い方しますね(笑)」

「えぇ?そう?」



弁当を受け取り、かわりに携帯番号のメモを渡された。


ぐいぐい来るタイプの人というのは、初対面のときから分かっていた。


いきなり自分の名前を名乗り、私にも名を聞いたんだ。


私より3つ年上で、実家はえらい田舎だと言っていた。


カズヤくんについて、他にはなにも知らない。



「せいらちゃん、絶対電話して!絶対ね!」


押し付けるようにしてメモを私に握らせ、楽しげに去っていった。



入れ替わりにシンくんがやってきた。

「なに?ナンパ?」

「お客さんだよお。最近よく来てくれるの」

「電話くれって言われてたろ?それをナンパっつーんだよ」

「ああ、そうか…」

「お前なあ…しっかりしろよ。中身まで子供じゃねえか」

「なっ…!中身もちゃんと30歳です!!」

「あー、わかったわかった。それよりさ、新しく出来たラーメン屋いこうぜ!」

「…おごり?」

「へいへい。」



シンくんは頻繁にご飯やお酒に誘ってくれる。


悪態をつきながらもいつもおごってくれるし、帰りはアパートまで送ってくれる。


なんだかお兄ちゃんが出来たみたい。いじわるな、だけど…。


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