小さな花
第2章 Not a boyfriend
―――1ヶ月後―――
「どうだ?慣れたかー?」
「あ、シンくん。今日は何にする?」
「んー。昨日飲みすぎたからなぁ。野菜炒めにしよ」
「またぁ?たまには休肝日つくれば?」
「お前に言われたかないね。」
結局私はかどやでバイトを始め、それなら審査は通過!という有馬さんの独断でアパートが決まった。
なんだかんだと面倒を見てくれた有馬さんを、シンくんと呼ぶようになった。
「あら、シンちゃん。最近よく来てくれるわね」
お弁当屋のおばちゃん、セツ子さんがシンちゃんと呼ぶので、つられたとも言える。
かどやでのバイトは週4日で、月のお給料は多分10万円くらいなはずだ。
商店街から近いほうが良い、と選んだアパートの家賃は6万円。
光熱費、食費を考えるととても生活できない。
シンくんが他にも仕事を紹介してくれると言ったが、しばらくゆっくり暮らしたくて丁重にお断りした。
貯金を切り崩しながら、半年くらいはのんびりしよう。
そう思っている。
幸い、バイトの日はお惣菜がもらえる!
残り物が出ればそれを、なければセツ子さんがお弁当をこしらえてくれるのだ。
「一人分増えたってねぇ、変わんないから。いいのいいの」
気の良いセツ子さんは御年72歳と言うが、信じられないくらい元気だ。
お客さんはだいたいが馴染みの年配者か、近所のサラリーマン。
だから12時からのお昼休憩にはちょっとした行列ができたりする。
始めてまだ2週間だけれど、すでに顔見知りが増えてきた。
「せ~らちゃん♪」
かどやの営業時間は19時まで。
最近、毎日のように閉店ギリギリにやってくる人がいる。
「あ、カズヤくん。今日も油淋鶏ですか?」
「うん!お願いしまっす。」